幕間
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アウラスカルト
アウラスカルト
関連キャラクター:熾煇
- これも真理探求だ
- 「何だ、これは……」
アウラスカルトは、少し不安げに、自分の髪をきゅっと握り締めた。
そんなアウラスカルトを前に、熾煇はキラキラと目を輝かせる。
「セーフクとかなんとか? 若い人間の女の子だけが着れるユニフォームだ!」
「ユニフォーム? これが?」
アウラスカルトはスカートの裾をつまんでみる。
「統一された衣類は結束を高めると聞くが、攻防に優れているとも思えない……」
「走りやすくて良さそうじゃないか?」
「一理あるかも知れないが……人間の考えることは、まだ解せない」
「でもでも、アウラすっごく似合ってる! めちゃくちゃ可愛いぞ!」
「可愛い……?」
アウラスカルトは、怪訝そうに眉根を寄せた。
「それは我に対して言っているのか」
かつてイレギュラーズたちと死闘を繰り広げ、練達や深緑を次々と襲った『金嶺竜』。
高等魔術を扱うエルダーゴールドドラゴンの生涯において、滅多に耳にすることのない賛美に、アウラスカルトは面食らった顔をした。
畏怖されたことこそあれ、愛でられたことなど一切ない。
そんなアウラスカルトの心境など察するはずもなく、熾煇はニコニコと笑い続けている。
「うん! やっぱアウラは可愛いな〜! こんな感じになるのも新鮮だ!」
「……そうか。これを可愛いと言うのか」
アウラスカルトは、前に置かれた姿見を見つめた。
美しい金髪を伸ばした、幼い少女。
熾煇へ、アウラスカルトは再び視線を戻した。
儚く脆い、人間じみた姿を「可愛い」と称するその笑顔を、じっと見つめる。
「……一部の生き物は、自らの種の繁栄のため、肉体的に優秀な個体を『美しい』と感じ、これから育成すべき個体を『可愛い』と感じるよう、本能が定めていると聞くが」
髪から手を離して、まっすぐに鏡に向き合う。
幼い自分の姿に馴染むのは、まだ先のことになりそうだ。
「……この我にもまだ『育まれる』べき余地があるというのは、興味深い考え方かもしれないな」
そう呟くアウラスカルトの唇に、小さな笑みが浮いた。 - 執筆:三原シオン