幕間
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気まぐれ幽霊の悪戯記録
気まぐれ幽霊の悪戯記録
俺様の何より好きなこと!
それは他人を揶揄うことさァ!
くだらねェことから、手の込んだ事まで
なんでもやるゼ、俺はよォ!
あァ、でも本気で嫌がられる様なことはナシな。
構ってもらえなくなっからよォ。
後、カップルにも手は出さねェ。
ああいうのに手ェだすと後が面倒くせェだろうし。
正体隠してやるならアリかもしれんが。
さァて、今日はどいつをどんな風に弄ってやろうかねェ!
気紛れ、性悪、悪戯好き。
だけどちょっぴりお人好し。
そんなクウハの悪戯記録。
Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20147
関連キャラクター:クウハ
- チェシャ猫のイタズラ
- とある街の駅前。
クウハは鼻歌を歌いながら、街を闊歩していた。
彼はご機嫌そうに、缶ジュースを手に持ち、シャカシャカと振りながらターゲットを探す。
街には道行く人々がいくらでもいる。その中で、イタズラをしても良さそうな人物を探していた。
ふと、クウハの視界に、ひとりの女の子が映った。
ひとりでつまらなそうに、駅の壁にもたれて、自分と同じように街の人々を眺めているその女の子に、クウハは口の両端をつりあげる。
――今日のターゲットは、この女にするかァ。
「お嬢ちゃん、随分ヒマそうだなァ?」
クウハが声をかけると、女の子は不審そうな目を向ける。
「なに、ナンパ? あっち行ってくれる?」
「そんなつれないこと言うなよ。退屈そうなお嬢ちゃんにプレゼントがしたいだけサ」
そう言って、先ほどまで持っていた缶ジュースを手渡す。
「……なんか変なものでも入ってるんじゃないでしょうね」
「そんなに信用ないなら調べてもらっていいぜ」
女の子は缶をひっくり返す。底に穴も空いていないし、もちろんプルタブを開けた痕跡もない。
「……ふん、まあもらってあげてもいいけど」
女の子が缶ジュースのプルタブに手をかけるのを、クウハはニヤニヤと眺める。
缶ジュースを開けた瞬間、ブシュッ! と、中の炭酸が噴水のように溢れ出した。
「わっ!? な、なに!?」
「ククッ……ケッケッケッケ! さっきまでシャカシャカ振りまくってたから、いい噴き出しっぷりじゃねえの!」
女の子はぽかんとして、噴水のように湧き出る炭酸ジュースを見つめている。
そして、クスクスと笑い始めた。
「ん? なにかおかしなことでもあったか?」
怒り出すと思っていたし、怒られても仕方のないイタズラをしたつもりだった。
「ううん、こうやって、誰かとふざけて戯れるの、久しぶりだったから……ありがとうね、お兄さん」
女の子の言うところには、友人と待ち合わせをしていたのだが、到着時間が遅れるとのことで退屈していたようだ。
女の子は噴き出しが落ち着いたジュースを飲んで、「ごちそうさま」とクウハに微笑みかけた。
「じゃ、友だちも来たみたいだから、私はもう行くね。暇つぶしに付き合ってくれてありがとう」
友人がこちらに寄ってくるのを見た女の子は、手を振ってクウハのもとから離れていく。
「うーん、こんなはずじゃなかったんだがなァ……?」
イタズラは成功したものの、思っていたのと違う結果に、クウハは笑いながら残念そうな顔をする。
――まあ、思わぬ方向に転ぶから、イタズラは楽しいのだ。
クウハはまた、次のターゲットを探しに、街をブラブラと歩き始めたのだった。
- 執筆:永久保セツナ