PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

気まぐれ幽霊の悪戯記録

俺様の何より好きなこと!
それは他人を揶揄うことさァ!

くだらねェことから、手の込んだ事まで
なんでもやるゼ、俺はよォ!

あァ、でも本気で嫌がられる様なことはナシな。
構ってもらえなくなっからよォ。
後、カップルにも手は出さねェ。
ああいうのに手ェだすと後が面倒くせェだろうし。
正体隠してやるならアリかもしれんが。

さァて、今日はどいつをどんな風に弄ってやろうかねェ!


気紛れ、性悪、悪戯好き。
だけどちょっぴりお人好し。
そんなクウハの悪戯記録。

Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20147


関連キャラクター:クウハ

シャム猫は月夜の下で乙女と踊る
 再現性東京のとある満月の日。
 今日は誰を揶揄って遊ぼうかと街をぶらついていたクウハは廃れたビルの奥上に立つ影を見つけた。

 女だった。長い黒髪が突風に靡いている。
 表情は見えないが、決して明るいものではないだろう。顎に手をやり暫く様子を眺めていたクウハだが、女が下を覗き込んでは引き返すのを繰り返すのを見てニンマリ笑った。

 決めた。今日の標的はあの女だ。

 フードを目深く被り直し、屋上へと続く非常階段を登っていく。カン、カンと冷たい金属の床を靴底が打ち鳴らし硬く無機質な音を立てた。
 少女はまだクウハには気付いてはいない様子で、下から観察していた時と変わらぬまま眼下の光景を覗き込んでいた。

「よぉ、何してんだ」
「ひうあっ!?」
 気配を殺すのなんて悪霊にとって当たり前。
 バランスを崩して前のめり、なんてことにならぬ様に細心の注意を払いピッタリとくっついて声をかければ少女の華奢な身体が跳ねた。なかなか甘美な悲鳴だ、悪くない。満足そうに頷き、クウハは少女の手を引いた。
 華奢だとは思っていたが、明らかに細過ぎる。碌にちゃんとした飯は食べてないと見ていいか。
「あの、あなたは……?」
「あ? そうだなァ……通りすがりの悪霊だと思えばいいサ」
「あ、悪霊?」
「そんなことよりオマエ。飛び降りようとしてたのか?」
「……っ」
 くい、と指さした方向を見て少女は気まずそうに目を逸らす。否定はしなかった。
「止める気ですか? や、やりますからね! こんな生きてても辛いことしかない世界なんて耐えられない!」
 少女が吠える。予想は付いていたが彼女を取り巻く環境は彼女に自ら生命を絶たせようとさせるほど劣悪だったらしい。
 クウハは首を振った。
「いーや? 言ったろォ、俺は悪霊だぜェ? むしろ仲間が増えるのは大歓迎」
 わざと大袈裟な身振りで少女を腕の中に囲めば、小さく悲鳴を上げた。
「ただ……」
「え」
 クウハは少女の小さな顎を掬い上を向かせた。不安げに揺れる大きな瞳には意地の悪いシャム猫が穏やかに微笑んでいる。
「あんまりにも俺好みのお嬢さんだったんでなァ。飛び降りちまうくらいなら俺が攫っちまおうと思ったのさ」
「えっ、ええっ?!」
 砂糖をこれでもかと溶かした紅茶の様にとろりと甘く囁かれたならば途端に少女の顔は青から赤に変わった。そのまま月明かりを背に紫苑の双眸が少女を捉え、ゆっくりと近づいてくる。
「えっ、あ、ま、待って……!」
 数秒後にきっと唇に触れる柔らかな感触に備えぎゅっと少女は目をきつく閉じた。

 ……。
 …………。

「あれ……?」
 待てども待てども唇が重なり合うことは無く、少女はクウハを見上げた。
「くっ、ふふ……」
 面白くて仕方ないと言わんばかりに、クウハは口に手を当て笑い声を噛み殺していた。
「か、揶揄いましたね!?」
「いや、面白くて、つい……くっ」
「さいってい!」
 揶揄われたのだという事実と舞い上がってしまった自分が情けなく少女は憤然としていた。
「ははっ、言っただろォ? 俺は悪霊だぜェ? 人を揶揄うのが生き甲斐……いや、霊だから生きてはいねぇか? とにかくそういう奴なんだよ」
 暫くツボに入っていたクウハだが、呼吸を整えた後、少女に向き直った。

「ま、でもオマエのコロコロ変わる顔は見てて飽きねぇな。それにオマエが可愛いのは本当だぞ」
「もう騙されませんからね!」
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