PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Ghost family

https://rev1.reversion.jp/guild/1335

鬱蒼たる森に在る、二階建ての古びた洋館。
絵画の瞳は此方を見つめ、ラップ音は鳴り響き、笑い声が木霊する。
そこはまさしくゴーストハウス!!

これは館の主クウハと住民達による
ある日のほんのささやかなお話。

Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20148


関連キャラクター:クウハ

ジョン・ドゥとジェーン・ドゥ
 生命の香りが一切失われたあの村から帰ってきて、どのくらい経っただろう。
開いた窓から吹き込んだ暖かな風が何処となく眠気を運んで、くああと館の主は大きな欠伸をした。

『眠いの、クウハ?』

声をかけてきたのは、件の村から、共に館へ『帰ってきた』少女型の霊、ジェーン。
素朴ながらも丁寧なパッチワークで仕立てられたワンピースが印象的だ。

『もう、昨日も夜更かししてたからよ』
「ンな事言っても、悪霊様ってのは夜に動いてこそだろ?」
「元気なのはいいけど朝まで帰ってこなかったじゃない。皆心配してたわよ」

その言様は、子が心配で仕方ない母のようであり、弟妹を叱る姉のようであり、兄に甘える妹のようであり、仕方ないわねと微笑む祖母のようでもあった。実際、そのどれでもあるのだろう。彼女は浮かばれなかった魂の集合体でも有るのだから。

「そういやあジョンは?」
『あの人達、さっきから探し物してるわよ。というかじっとしてるのは落ち着かないみたい』

ジョンもまた、ジェーンと出自を同じくする、少年の姿をした霊だ。
それだけにジェーンとしみじみと思い出話に浸ったかと思えば、ひょんなことで言い争う事もあったり、かと思えば互いに無関心を貫いたり。

『なあクウハ、シャベルないかー? 早く種蒔きしないと春に間に合わないじゃないか!』
「そもそも幽霊って畑仕事出来るのかよ」

ジェーンが老婆、女性、少女の塊であるなら、ジョンはお茶目な祖父、働き者の父、外遊びを好む少年を集めて一人の人間にしたようなものだ。尤も、ジェーンに比べるとあの通り、能天気というか、無邪気な気質が目立つけれど。

「……しかし、霊が蒔く種なァ」

そういえば、つい先日、館の住人や友人達と、雪の霊を共に遊ぶ機会があった。もしジョンが花を育てたならば、似たような事が起こるのだろうか、と空想して。

「ンー……今度御主人に相談するんでいいか?」
『仕方ないなあ。じゃあ畑仕事は今度に回すとして……クウハ、僕達と一緒にかけっこでもしないか?』
『もう、クウハは貴方達とは違うんだから! そんなに暇じゃないんですよ!』

見かけは一人、中身は大勢。
だから彼等の自称も、ジェーンとジョンが互いを呼び合うときも、常に複数形だ。

私達。僕達(たまに俺達)。貴方達。君達。
誰にも知られず死んだ彼等。誰にも看取られなかった彼女達。

だが、ここには家族がいる。もう独りでは無いのだ。

「ところでオマエ等、ジョンとかジェーンって勝手に呼んでるけど、他に呼ばれたい名前は無いわけ?」
『そうはいっても僕達、ダニエルでもあればジョージでもあるし、ベンって言われればそうだった気がするし』
『クラリスでもあれば、リリーだった気もなんとなくしているし』

そう言うと、彼等は声を揃えてこういった。

『だから、呼びたいように呼べばいい』。
「そうかい」

まあどうしても気になるならこの館に来るもの達に、名前を相談すればよし。
別に不満がないのならこのままでもいいだろう。
クウハはまた、大きく欠伸をした。

『ん、眠いのか? ……俺達も……昼寝しちゃおうかなあ……』
『もー、寝るならベッド行きなさいベッド!』

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