PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Ghost family

https://rev1.reversion.jp/guild/1335

鬱蒼たる森に在る、二階建ての古びた洋館。
絵画の瞳は此方を見つめ、ラップ音は鳴り響き、笑い声が木霊する。
そこはまさしくゴーストハウス!!

これは館の主クウハと住民達による
ある日のほんのささやかなお話。

Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20148


関連キャラクター:クウハ

命を使い果たしたはずの猫、シャサ
 一つ目の記憶は優しい終わり。野良猫だったけど暖かな家族に拾われて、短い間だったけど大好きな飼い主の腕の中でその生を終えた。
 二つ目の記憶は悲しい終わり。気が付いたらいた土の中、這い出して探して見つけた前の家。驚かれた飼い主に殴り殺された。
 三つ目の記憶は悲嘆に暮れた終わり。なぜ未だに動いているのか分からずに、流れる川へと身を投げた。
 四つ目の記憶は恵まれた終わり。流れ着いたところを小さな子供に拾われ、再び飼い猫として生きた後、数字ににして眠りについた。
 五つ目の記憶は孤独な終わり。目覚めた土の中、這い出したところで帰る場所はなく、野生として生き抜こうとして鴉に襲われた。
 六つ目の記憶は意義ある終わり。目覚めたのちに拾われたのはとある学者の家。そこで知った自分の秘密。『猫には命が九つある』だから死んでしまってもすぐまた会える。なるほど、だから自分はいくつも死んだ記憶があるのか。
 目覚めた自分を受け入れて、七つ目の記憶も八つ目の記憶の時も彼はそばにいてくれた。
 死を覚えていたから知っている、これが九つ目。終えた時が彼との永遠の別れなのだろう。悲しいことだけど、最後いくらかの命が満たされたものでよかったと思う。だから満足して自分はその生を終えた。……はずだったのに。


「旦那様、旦那様」
 声をかけられてクウハはそちらを見た。元の色も柄もわからないようなボロボロの毛皮をした猫がそこにいて、目と目が合う。
「なんだシャサ、また来たのか」
「だって今日はあの猫はいないでしょう?」
 そういわれてそうだったとクウハは思い出した。今日は『あの猫』こと化け猫の女王様は屋敷を留守にしていていない。そして決まってシャサが訪れるのはそういう日だと決まっていた。
「それで、今日はどうすんだ」
「背中側の毛皮を整えてくださいます?」
 言いながら飛び上がってきたシャサを抱きとめる。何かが腐ったような匂いと小さな蠅が目の前をかすめた。言われた背中の肉は腐り、毛を抱き込んで半液状となって落ちかかっている。白っぽいものも見えるが恐らく骨だろう。
 相変わらずひどいこった、なんて呟きながらクウハは嫌な顔一つせず魔力を込めながら毛の向きを整えるように背中を撫でてやる。するとそれ以上のことはしていないのに腐った肉がいくらか綺麗になり灰色の毛がむき出しの皮膚を隠すように生えてきた。先ほどまでしていた匂いも消え、腕の中にいるのはみすぼらしい猫になる。
「はぁ~、気持ちいいですわぁ~」
 力を抜いてリラックスしているシャサ。そんな様子を見ながらクウハは思うのだ。整えたところで数日たてばまた腐るのに懲りないこった、と。

 彼女はシャサ、魔力を糧にその身を保つゾンビ猫である。
 彼女自身は何度も死んでいるとそれは猫の複数の命かあるからだと思っているが、実はそうではないと生まれついてのゾンビ猫だと知らないのは本猫だけなのである。
執筆:心音マリ

PAGETOPPAGEBOTTOM