PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Ghost family

https://rev1.reversion.jp/guild/1335

鬱蒼たる森に在る、二階建ての古びた洋館。
絵画の瞳は此方を見つめ、ラップ音は鳴り響き、笑い声が木霊する。
そこはまさしくゴーストハウス!!

これは館の主クウハと住民達による
ある日のほんのささやかなお話。

Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20148


関連キャラクター:クウハ

幽霊犬タマ
 自分は犬です。種類はわかりません、昔の主は雑種だと笑っていました。
 昔の主はとっても大事にしてくれていました。真っ赤な首輪に『タマ』と一生懸命書いてくれました。それが自分の名前だと言ってくれました。
 でも今は主はいません。何があったか忘れてしまいました。ただ必死に森の中を駆け回っていたことは覚えています。そして屋敷にたどり着いたんです。

 ワンワンと自分は吠えました。古びていて誰もいなさそうな屋敷だったけど、お腹が空いていたんです。しばらく吠えていたら変わった服装の男性が出てきました。
「なんかうるせぇと思ったら、犬っころが何か用か?」
 ワンワン、ワンワン。
 自分は必死に訴えました。人間に言葉が通じないのは知っていましたが、それでも空腹と疲労で今にも倒れそうでしたから。
 でも意外なことに出てきた彼はぱちくりと目を瞬いてからニンマリと笑ったんです。まるで言葉が通じてるみたいに、聞いた言葉があまりにおかしいというように。
「お腹が空いてるって? でももうお前死んでるじゃねーか」
 そういわれて初めて気づきました。先ほどまでの空腹も疲労もどこへやら、そんなものがあるはずなかったんです。落とした視線、見える足はぼんやりと透けています。彼の言うように自分はもう死んでいたのです。
 さて、あっさりと自覚したのは良いのですがどうしたらいいのかわかりません。この魂はどこへ行けというのでしょう。
「行くとこないんだったらここにいるか? 子供たちも喜ぶだろうしな」
 自分が困っている様子を見かねたのでしょう、彼がそう言ってくれました。なので自分は快諾することにしました。彼はこの屋敷の主だそう、ならば彼を新たな主として仕えようと思ったのです。
 ワン、と了承の気持ちを込めて吠えれば彼はふっと笑いました。人間の言葉ではないはずなのに不思議といいたいことが伝わるのは自分が死んでいるからでしょうか?
「んじゃ、決まりだな。ところでオマエさん、名前はーっと」
 名前を求められていたので自分は首を誇らしげに上げて首輪を見せることにしました。そこには自分の名前が書いてありますから。
「タマ、ってこれがお前の名前か?」
 ワン。
「そうか……」
 ちゃんと伝わったはずなのに彼……ではなかった、新しい主は複雑そうな顔をしていました。
「まぁいいか、ほら、中はいるぞタマ」
 ワンワン。
 自分は喜んで尻尾を振り、新しい主について屋敷に住むことになったのでした。
 ただ屋敷に入る前に新しい主の言っていた「タマって猫に付ける名前じゃなかったか……?」とはどういう意味だったのでしょう。聞いてみてもいまだに教えてもらえていないのです。
執筆:心音マリ

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