幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
Ghost family
Ghost family
https://rev1.reversion.jp/guild/1335
鬱蒼たる森に在る、二階建ての古びた洋館。
絵画の瞳は此方を見つめ、ラップ音は鳴り響き、笑い声が木霊する。
そこはまさしくゴーストハウス!!
これは館の主クウハと住民達による
ある日のほんのささやかなお話。
Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20148
関連キャラクター:クウハ
- 矛盾する双子
- 僕はエルト。僕はトルエ。
僕らは二人で一人、一人で二人。ずーっとそうやって生きてきたんだ。死んだってそれは変わらないし、死んだからもう僕らは変わらない。
だから一人の僕らを見分けられるわけがないんだ。そのはずだったんだよ。
でも新しい住処には強敵がいるんだ。ほら、来た。トコトコ歩く猫耳フードが生意気なこの住処の主、今度こそやって見せるんだ。
ばぁーって、二人で彼を囲ってグルグル回る。ぴたって止まって、さぁどっちがどっち?
「なァんだ、またお前らか」
最初にどっちがどっちか目視させてない、しかもぐるぐる入れ替わった、いつも立ち位置は適当だからそれで見抜かれるはずもない。なのに、なのに……。
「右がトルエ、左がエルトだろ」
チラッて僕らを見ただけで言い当てられる。悔しいから『はずれ!』って言っても慌てることなく「嘘だね」って見抜かれた。
なんでわかるんだよって僕は怒る、僕らは怒る。誰にも見分けられないはずなのに、一人だけ見抜かれるのがどうしても許せない。
はるか昔は、生きていたころは、見分けてほしかった気がする。
僕と僕は別々の人間で、別々の考えがあるんだって知ってほしかった気がする。
それは結局叶うことなく、僕らは全く同じ日に死んで全く同じ幽霊になって全く見分けがつかなくなってしまったのだが。僕らだってお互いを眺めているとエルトなのかトルエなのかわからなくなるのに。
初めて会って自己紹介した後、猫耳フードの主は僕らを一回も間違えたことがない。
僕らを見分けてほしい、それが未練だったならもうとっくに成仏できるのだと思うが、僕らには違う"成仏しない目的"ができた。
いつかここの主にギャフンと言わせる。見分けがつかないようにしてクイズを外させるんだ。
「お前ら、双子っていう割にわかりやすいからな!」
どこがわかりやすいんだよ、って聞いてもコイツは教えてくれない。ただおかしそうにクツクツ笑うだけ。それがまた悔しい。だって僕らにもわからない僕らを知ってるみたいじゃないか。
次は絶対外させてやるんだからな! なんて捨て台詞を吐いて僕らはまた外させるための作戦を練るのだ。
「館の主としちゃあ、住人を覚えるのは当たり前だからなァ。悔しそうにされるもの気分がいいもんだぜィ」
飛んでいく僕らの耳にそんな声が聞こえた。でも聞こえたのはここまでで、そのあとにまだ呟いてるのだけは知らなかったんだ。
「それに、当てたら心底嬉しそうな顔するんだもんな。外すほうが可哀そうだろ」 - 執筆:心音マリ