PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Ghost family

https://rev1.reversion.jp/guild/1335

鬱蒼たる森に在る、二階建ての古びた洋館。
絵画の瞳は此方を見つめ、ラップ音は鳴り響き、笑い声が木霊する。
そこはまさしくゴーストハウス!!

これは館の主クウハと住民達による
ある日のほんのささやかなお話。

Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20148


関連キャラクター:クウハ

 あまり自分のことを覚えていないから、誰かの生活を、ずっと、ずっとなぞっている。残されているものからその人の生活や生き方を想像して、そういう風に振る舞って、何もない自分の穴を、埋めている。

 ふらふらとやってきた新しい屋敷には、自分以外にも幽霊がたくさんいるらしかった。だけど元の持ち主のものも残っていたから、その人の生き方をなぞることはできた。
 今ここにいるひとたちの真似はできない。そんなことをしたら、自分はただのコピーだと言いふらしてしまうことになる。だからここにいない誰かの真似をするしかなくて、そのひとの写し鏡になれるように、自分の穴を埋めて、同時に広げ続けた。

「オマエさん、名前は何ていうんだィ?」

 話しかけてきたのは、耳のついたフードを被った男だった。彼もまた、「幽霊」だと言う。

 元々の名前なんてものは忘れてしまった。ここにいた貴族の名前が欲しいくらいだ。

「忘れちまったのかァ」

 彼はうんと首をひねり、それから軽やかな音を発した。貴族の名前でも、今までの名前でもない、新しい名前だった。

「僕の名前にしていいのかい?」
「呼ぼうにも名前がないと困るからなァ。気に入ったら使ってくれればいいさァ」

 猫耳がくしゃりと笑い、僕に任せるとでも言うように去っていった。


 それから僕の名前は***になった。誰かをなぞることをやめたわけじゃないけれど、名前のある誰かになれたのだから、あまりその必要を感じなくなった。

「よォ、***」
「おはよう、クウハ」

 穴は、塞がった。だからもう、僕は十分なのだ。いつものにんまりとした笑みを浮かべる彼に、僕はそっと微笑んだ。
執筆:椿叶

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