PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Ghost family

https://rev1.reversion.jp/guild/1335

鬱蒼たる森に在る、二階建ての古びた洋館。
絵画の瞳は此方を見つめ、ラップ音は鳴り響き、笑い声が木霊する。
そこはまさしくゴーストハウス!!

これは館の主クウハと住民達による
ある日のほんのささやかなお話。

Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20148


関連キャラクター:クウハ

絵画の少女:名称不明のため便宜上レディ
 お屋敷の二階、長めの廊下にその絵画はかかっている。金髪に青い瞳、可愛らしい十歳程度の少女の絵だ。ニヤッとしたいつもの顔でクウハは絵画に向かって話しかける。
「よォ、今日も外見て浸ってんのか、レディ?」
 声に反応して外を見ていた少女の視線が瞬きクウハを見た。続いて少女の口が動く。絵画なのにだ。
「だっていつまでたってもここから動けないんだもの。お屋敷に来たときは知らない景色だから楽しかったけど。ねぇお兄ちゃん、早く私を移動させてよ」
「さァてどうすっかね。あちらもこちらももう一杯だからなァ」
「もう! 意地悪。じゃあせめてお話に付き合ってよね」
 そういうと少女は話はじめた。

 私は昔々大金持ちのお嬢様だったのよ。たくさんのお菓子とたくさんのぬいぐるみとかわいいお洋服とお父様とお母様といっぱいの使用人と暮らしてたんだから。すごいでしょ?
 でもね、私が病気になってから家の中がめちゃくちゃになったの。どれだけお金を出したってどんな優秀なお医者様だって私の病気は治せなかったわ。その時のことはあんまり記憶にないんだけど、胸が苦しくてお父様もお母様もいつも泣いてたのだけは覚えている。
 苦いお薬も痛い注射も嫌だったなぁ。
 そのうちにお医者様が来なくなって、代わりにお父様とお母様が喧嘩する声ばっかり耳に入ってきたわ。私のせいなのかな、って思ったのだけどお二人とも違うっていうの。不思議でしょう?
 ある日、お母様が私をベッドから抱き上げてお部屋から連れ出そうとして、お父様に見つかって、そのあとからお母様を見なくなったの。代わりに画家が私のお部屋に入るようになったわ。
 健康になるおまじないだからって画家は何枚でも私の絵を描くの。
 何枚も、何枚も、何枚も何枚も何枚も何枚も。ぬいぐるみを覆っても、お洋服を覆っても、もっともっと描くの。お部屋が私の絵で埋まっても描いたわ。

 そして私は死んだの。当り前よね、絵を描いて治るわけないんだから。でもお父様は納得しなかった。それで画家の描いた最高傑作の私の絵に私を封じたってわけ。
 酷い話だと思わない? 病気になってからほとんど外に出られなくて、死んでやっと外をまたみられるって思ったら絵に封じられたのよ?
 しかも飾られたのはお父様の書斎、窓にはカーテンがかかってて景色が変わることもない。唯一良かったのは姿を見なくなってたお母様がそこにいたことぐらいだけど、お母様はお父様を呪うばかりで別に話してくれるわけでもなかったわ。
 で、結局お父様が死んでお家のもの全部売り出されるまでそこにいたってわけ。

「……可哀そうでしょう? ほら、哀れに思ったら別の景色のところに移動させてよ」
「はいはい、そのうちなァ」
 ケッケッケと笑いながら去りつつクウハは手を一振り。カタンと音がして、後ろから少女の怒った声がした。
「ちょっと、絵をずらさないでよ! 直すの大変なんだからぁ!!!」
執筆:心音マリ

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