PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

Ghost family

https://rev1.reversion.jp/guild/1335

鬱蒼たる森に在る、二階建ての古びた洋館。
絵画の瞳は此方を見つめ、ラップ音は鳴り響き、笑い声が木霊する。
そこはまさしくゴーストハウス!!

これは館の主クウハと住民達による
ある日のほんのささやかなお話。

Twitter紹介文+FL記録。
https://rev1.reversion.jp/guild/1335/thread/20148


関連キャラクター:クウハ

悪霊ならば。
瞳を開け、周りを見れば、どこか見覚えのある空間。

『ひどい顔だな。悪霊。』

 そう声をかけてくるのは。

「オイ、なんだヨその恰好は。」

 どこか見覚えのある、けれど出るところは出ている、艶っぽい、街中でいたら盛った男どもが声をかけるだろうが、自分は絶対声はかけねぇだろうなと思う女姿がそこにあった。

「貴様の姿を借りただけだが、何か不満か? 我は一応牝馬故な、雌の姿を取ってはいるが。なに、自信を持ってよいぞ。あのラッパ吹きの小僧もまんざらでもなさそうだったからの。」

 ちょ、おまっ。
 そう突っ込みたい気持ちだったが、遊ばれているのは明白。ハァと一度わざとらしいまでに大きく息を吐き、頭を掻いて、気持ちを落ち着かせる。

『感謝するがいい。眠れぬ同族を、気紛れに安らぎへと誘ってやったのだからの。』

 白い空間に現れる簡素なテーブルと、一対のチェア。その片方へと腰を掛けるプエルトに倣うように、クウハも腰を下ろす。

『他者から学ぶや良し、されど、他者を自身に投影するは愚かというものよ。』

「……っとに、この駄馬は。勝手に人のアレやコレや覗き見やがって、悪趣味が過ぎるゼ。」

 零れる悪態にも、いつものキレはなく。その顔には怒りというよりも、自嘲の色が浮かぶ。

『だが貴様の思いも分かる。今の貴様と、かの大喰らい。なるほど、通じるものもあろうて。』

 クククッと、自分を模した女姿で科を作るプエルト。それを、頬杖をついて横目に見るクウハ。

『奴の言を是とし、その在り方のままに喰らうを良しとするは、己の未来を見るようで、度し難いか。』

 かたや大罪。かたや特異運命座標。だが、そこに眠る魂への飢えに、なんの違いがあろうか。

『縁を繋いだ者らが死地へ赴く。故に貴様も盾にならんと飛び込む。なるほど筋は通っている。だが、それは貴様の本来の在り方か? 悪霊よ。』

 そう問われれば、クウハの視線はついと泳ぐ。
 何度でも言おう。クウハは悪霊だ。人と道を違え、己の在り方のままに、人を害しても構わない。そんな悪霊が、人を愛し、彼らを守るために盾となる。それは、本当に悪霊として正しい姿なのだろうか。

 ――――本当のお前は違うだろう。

 そう言っているかのように、自身の中の”飢え”が鎌首をもたげるたび、主に酔うことで誤魔化してきた。旦那なら、慈雨ならば、その魂(と呼ぶものがあるかは定かではないが)を損なわず自身を受け入れ、渇きを潤してくれる。

『……だが、それも良いではないか。』

「……アン?」

 話の雲行きが変わったことを感じ、クウハは再び、目の前の夢馬へと視線を向ける。

『そも、貴様は誰と比べているのだ。比べるほど、貴様は永きを生きたというのか?』

『方や幾百という歳月を生き、多くを愛し、喪った者。それに対し、貴様はいかほど生きたという。いくらを愛し、いくつを失った?』

『時の長さが。縁の数が全てとは言わぬ。だが、生まれたての赤子と老人など、比べるべくもあるまいて。』

『貴様はまだ、この混沌に生まれ落ちたばかりの赤子よ。なれば、赤子がどう生き、どう育とうとも自由というもの。』

 それに。

『悪霊としての在り方を神の定めし運命とすならば。神に逆ろうてこそ、真に悪というものであろう?』

 ――我が儘であるがよい、悪霊。その先に破滅や後悔があったとて。

 徐々に遠くなる声に。

 いつになく饒舌じゃねぇかヨ、と。夢の中でついた悪態が、届いたかどうか。
執筆:ユキ

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