PandoraPartyProject

幕間

『この貸しは、返して貰わないとな?』

関連キャラクター:仙狸厄狩 汰磨羈

逢瀬だというならエモーショナルに。
 ――今度の休日に、デートとかどうだ?

 汰磨羈の誘いを耳にしてから水夜子はaPhoneで連絡しますねと返していた。その理由というのも折角のデートだというならシチュエーションに拘り抜いてエモーショナルな一日を演出したいというのだ。
 如何にも事態を愉快に演出したがる水夜子らしい。みゃーこと呼んで欲しいとからかうような口調で告げる彼女を思い浮かべてから汰磨羈は連絡を待った。
 曰く、10時に駅前集合。服装はデートに相応しいものを、という事である。汰磨羈が選んだのは希望ヶ浜で若い女子達が良く着用して居るのを目にしたオーバーサイズのTシャツにジーンズといったメンズライクな服装であった。駅前で待っていた水夜子はマーメイドスカートにフリル多めのブラウスといったガーリーな格好をしていた。『デート』だからだそうだ。
「あら、素敵な格好。どんなお洋服にするか悩んでくれました?」
「ああ。折角の貸しを返して貰うから拘ってみた。みゃーこはどうだ?」
「私も。悩んで通販サイトを眺めちゃいました。可愛いでしょう?」
 どうですか、ほらほら。そんな言葉を重ねてくる水夜子に汰磨羈は可愛い可愛いと返した。出掛ける先も王道ルートを攻めるのだそうだ。カフェに立ち寄ってコーヒーをテイクアウトした水夜子は水族館に行こうと提案した。まだまだ暑い夏の陽射しを遮る涼やかな水族館でイルカショーなどを眺めて館内のレストランでランチを済ませる。それからお土産屋へと寄ってのんびりと帰路を辿るのだという。
「時間ありそうなら夜景を眺めるのも楽しそうですけどね。夏ですし、未だ未だ蒸し暑いかもしれませんけど」
「みゃーこがしたいことに付き合おう。まあ、それも『貸し』『借り』になるならば減らないがな?」
「ふふ、ええ。ツケといてもらえればずっとたまきちさんとデートできるんですよね」
 少しばかり悪戯に、それから。何処かからかうような口調で本心を隠したように話すのが水夜子だ。汰磨羈はそんな彼女の反応にも随分と慣れてしまった。
 のんびりと歩む背中を追掛けて、テイクアウトしたアイスコーヒーを口に含んでから前を行く水夜子が「あ!」と唐突に叫ぶ。何かを思い出したように振り返った彼女に汰磨羈はぴたりと足を止めた。
「手、繋ぎましょうよ。デートなんですよね?」
「……ああ、構わないよ」
「んふふ。たまきちさんが私の理想のデートをしてくださる。何て素敵なんでしょうねえ」
 にまにまと笑った彼女はどこか汰磨羈の様子を伺うかのようだった。愛刀に走った亀裂。それ故に、気にした様子を見せる彼女は『その現状を忘れていられるくらい楽しい』デートを演出しようとしたのだろう。
「ねえ、たまきちさんがしたい事も教えてくださいよ。ええ、みゃーこちゃんって結構サービス精神旺盛なんですから」
「水族館までのエスコートをお願いしても?」
「ええ。実はチケットも購入済み。並ばずには入れちゃうんですよ。至れり尽くせり、細かいところまで気が回って可愛い彼女。付き合いたいでしょ?」
「――どうだか」
 答えてくださいよと笑う水夜子に汰磨羈は「はいはい」と流すように頷いた。まともに相手にしても彼女自身の本心は見えやしない。そんな言葉(こと)を問い掛けながらも、実際は大して感情が籠もってないこと位、『希譚』の調査で彼女と長く関わる内に良く理解出来たものだ。
「まあ、いいですよ。じゃあ、手を繋いで。さ、行きましょう。デートはまだまだこれからですよ」
 一先ずは彼女の望むデートに付き合ってやろうではないか――
執筆:夏あかね

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