PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

日常系

関連キャラクター:ゼファー

Cuppa.
 ――食後のお紅茶は、如何、ですか?

 朝食を摂り終わったタイミングで、モーニングプレートを下げながら隻眼のウェイトレスがおずおずと云った。
「此処にそんなサービスあったかしら?」
「良いじゃない蜂蜜ちゃん、折角だから頂きましょう」
 まごつく少女に流し目を送る、隙の無いゼファーにアリスは口を尖らせて。

 ――直ぐ準備をする、ので、お待ち下さいね。

「あら、つれないの」
「ゼファー……」
 世界各国を巡り旅を続けるふたりには、『其の辺りに行ったら彼処に泊まる』という宿が幾つか存在する。
 其の一つ、此処は幻想の程々に栄えた場所にある、老夫婦が営む宿屋だ。
 特段華やかでも無いが小綺麗で素朴な所が売り。ご飯が美味しくて、旅暮らしには有難い広めのお風呂が気持ち良い。

 ――驚いた? 何だかあの子ったら、お茶を淹れる特訓をしているの。

 ――お、おばあさん! あ、あの、お待たせしました。

 陶器のティーポットから濯がれた紅茶は眼が醒めるかの様なスパイシーな馨り。

 ――ええと。此れは、ローズマリーティーで。その、少し苦いと思うので……此方の『蜂蜜』をどうぞ。

「まあ、まあ! 一本取られたわね? 私が『蜂蜜ちゃん』って呼んでるの、覚えていてくれたのでしょう?」

 優雅な朝の一幕。ふたりが口を揃え『美味しい!』と云えば少女は照れ屋な花の様にはにかんだのだった。
執筆:しらね葵

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