PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

日常系

関連キャラクター:ゼファー

You smile, I smile.
 湿っぽい空模様だこと。ゼファーの唇がそんな音を囁けばアリスは「お嫌い?」と問い掛ける。
 ソファーに乱雑に放り出した洗濯物の山に埋もれるようにして『蜂蜜』が広がっていた。白いシーツが含んだ雨の香りは、心地よさには程遠く湿った気配だけが部屋を包み込む。
「お日様の香りが恋しいのかしら」
「そうね、けれど雨も悪かないわ。二人きり、雨の異国情緒溢れる海洋(このくに)で扉を閉ざして過ごせるんですもの」
「情熱的ね」
 唇に乗せたのは軽やかな口説き文句。ムードもへったくれもないけれど、それ位が丁度良い。身体を寄せ合えば皮膚に纏わり付いた汗の香りが蜂蜜色の彼女のワンピースに移った気がした。唇を頸筋に寄せて「眠ってしまおうかしら」とゼファーは囁いた。
「其れも悪くは無いわ。目が醒めたら空も泣き止んで仕舞っているかも。ねえ、そうしたらお買い物に出掛けましょう?
 ディナーの準備を雨上がりの街でするのは屹度、楽しいわ? レインブーツの準備は出来ているかしら」
「突然の雨の相合い傘も悪かないでしょう?」
「ふふ、そうね。それじゃあ、少し眠ってしまいましょう? ゼファーとわたしのふたりきりで」
 耳朶を撫でた指先は冷たく心地よい。雨が閉ざしたこの部屋で、幸せだと笑っていて――いとしいひと。

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