PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

パン屋の日常

関連キャラクター:零・K・メルヴィル

女の子とフランスパン
「パン屋のお兄ちゃんだー!」
「だー!」
 パンをください、と零に駆け寄ってきたのは二人の女の子だった。姉妹だろう、二人仲良く手を繋いでいる。
 ここは鉄帝国のとある町。零がパンを売り歩く姿がすっかりなじんでいる場所の一つだ。
「いらっしゃい、何が欲しいんだ?」
「えっとねー、私メロンパン!」
「わたしトラちゃんのやつ。トラちゃん」
 小さい方の女の子が言った『トラちゃん』とはコラボパンの一つ、とらぁぱんである。あのVDMランドのマスコットとらぁ君を模して作られたクリームパンだ。
 あの顔がかわいいからなのか、ぬいぐるみっぽいからなのか小さい女の子からはたまにせがまれるパンでもある。時々ネコちゃんって言われるが、さておき。

「はいどうぞ、気を付けて持っていくんだよ」
 お姉ちゃんのほうからお金をもらい、パンを手渡すが二人はまだ帰らない。
 少し言いにくそうにもごもごしながらじっと受け取ったパンとお互いの顔を見合わせている。
「どうした? まだ用事でもあるのかい?」
 腰を軽く落として女の子たちと視線を合わせると迷った末に小さい方の女の子がこう言ってきた。
「おおきいフランスパンがほしいの」
「大きいフランスパン? なんでか聞いてもいいかい?」
 こくりと頷くと女の子たちは話し始めた。
 曰く、二人の母親が今日誕生日らしい。それで零のパンを気に入っている母親のためにフランスパンをプレゼントしたい。ビックリするぐらい大きいのがいいけど、母親にはバレたくない。ということだった。
「なるほどなぁ」
 少し考えた末に零は少し待っててと屋台の裏へ引っ込んだ。

「お兄ちゃんありがとー!」
「ありがとー!」
「おう、気をつけるんだぞ」
 女の子たちを手を振って見送る零。女の子たちの間には箱が一つ。二人でしっかりと握って落とさないように。
 箱の中身はもちろんフランスパンだ。ただし、大きなホールケーキの形をした。
「喜んでもらえるといいな」
 見送りながら零はそう呟くのであった。
執筆:心音マリ

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