幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
パン屋の日常
パン屋の日常
関連キャラクター:零・K・メルヴィル
- グリルドチーズ
- 「なんだぃ、それ?」
「いや、俺も最近知ったレシピなんですけど美味しそうで」
まずはやってみて、それから採用するか検討したいメニューなんだと零が言い出したのはチーズメニューだ。
なるほど、確かに『羽印』にはチーズ系はない。
まず硬めで塩を使ったフランスパンを二枚、スライスして本命のチーズを用意する。
フライパンにバターを溶かして一枚目のフランスパン、そのフランスパンの上にチーズをたっぷり重ねる。
そう、重ねるのである。チーズを。しかも。
「ふむ……チェダーチーズにナチュラルチーズ、それにグリュイエールチーズ。一種類じゃないとは贅沢だね」
試食に呼ばれていた商人も興味深く零の手元を見つめる。
チーズを乗せおえると、もう一枚のフランスパンをまた乗せて蓋のようにする。
もちろんバターを追加して、こちらにも焦げ目が付くようひっくり返して焼く。
「本当はひっくり返さないでこう、掬ってかけて焼くらしいんですが……まあちょっと手間なので…………」
モゴモゴと言い訳をしつつ、フライパンの様子を見て三分ほど。これで出来上がりだと言う。
その場でそっと割ってみると、意外にもチーズはとろけてこなかった。それでも香りはとても美味しそうなそれである。
「それじゃあ、どうぞ」
缶を開けて鍋で温めたトマトスープと塩コショウも添えて半分を差し出して試食。
一口齧れば、チーズのコクと塩気が堪らない味わいが口いっぱいに広がる。
「これは美味しい。ただ、メニューに加えるとなるとやや高額になるかもね」
「そうだよなぁ……でも美味しいし、まずは期間限定とかで入れてみようかな」
その後もふたりはフランスパン版のグリルドチーズをどうやってメニューに組み込むかを議論しながらランチミーティングを終えるのだった。
- 執筆:桜蝶 京嵐