PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

突撃!エリカの今日の晩御飯!

関連キャラクター:エリカ・フェレライ

紅き夕餉
「散々他人から奪う生き方をして、そんな顔をするんですね」
 エリカ・フェレライは鼻で笑い、追い込まれた男の前に立ちはだかった。
 ――時は夕暮れ。山賊の退治を請け負った彼女は、今まさに彼らの隠れ家を襲い、同時に夕食も摂っている真っ最中である。手狭とはいえない洞穴はすでに、何処へ行こうが人血の芳香が付いて回るような有り様になっていた。点々と続く返り血の跡は、ついに首魁の居室へと。
 エリカとて道理を無視するほど冷酷ではない。生きるために致し方なく強奪を続けているのならば、情状酌量の余地は残っていた。それがこんなにも、そそられるほどに肥え太ってしまって!
 舌舐めずりをする。善悪と倫理にまつわる問答をするつもりもなければ、命乞いを聞き届けるつもりもなかった。もう何人も胃に収めたが、まだまだ欲求は満たされない。疼く飢餓が目の前を眩ませ、単純化された思考が即物的な手段へと掻き立てる。
 彼女の柘榴色の髪が靡き、背後の闇より影が伸びた。
 影。立ち昇る貌はやがて捕食者の輪郭を形作る。緋色の双眼が灯り、今宵の獲物を睥睨した。
「た、たすけっ――」
「いただきます」
 甘く酔いしれた声音が、食事の始まりを告げた。
 影が牙を剥く。絶叫が響く。
 永い静寂の訪れた洞穴で、最後に残ったのは、機嫌良く腹をさする少女と、彼女に付き添う闇の獣だけだった。



「あぁ、よく無事で! 戻ってこないかと思ってたよ!」
「この村の皆さん、もう山賊の心配をしなくていいのですよ」
「え? ……と、とりあえず、中に入りな。まだ夕食も食べてないだろう? 量は少ないけど、特製のスープを用意してるよ」
「やったぁ!」
執筆:

PAGETOPPAGEBOTTOM