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幕間

愛人日記

関連キャラクター:アリシス・シーアルジア

愛人日記(無慈悲なUR)
●グルメ
 美食が過ぎると不幸になるというのは本当だと思う。
 繊細にして見事な仕事を施す一流のシェフの調理はまるで魔法のようだけど――
『美人が三日で飽きる』と同じように『食べ飽きる』なんて嘘である。
 それは厳密に言えば『より良くを望むようになる』と言おうか。
 つまる所、美食に慣れればより素晴らしい美食を求むるようになるだけで、粗末な食事をしたくなるという訳ではないという事だ。
「……そういう観点において」
 冷静に、至極冷静に私は状況を述懐する。
「そういう観点において、ひょっとして現状は最悪なのではないでしょうか?」
 沈思黙考ならず、敢えて口に出したのは現状理解をより進める為である。
 魔術師の生業には言霊とかそういうのもあるが、まぁそんなようなものである。
 存外に自分に言い聞かせる事は意味を持つ場合もあるものだから。
「……思えば、ここ暫く全く出会いらしい出会いはなかったのでは」
 時に才能に溢れた俊英を見つければ共に居る事はあったのだが、『そういう風情』にはなっていない。
 痩せても枯れても自身は美人の類であり、声を掛けられる事も、求められる事も多い事は確かである。
 しかしながら、恐ろしい位に全くもって『そういう風情』になりようがない。
「……」
 何故か、と由々しき(?)事態を考えた。
 自分は魔女だから、どうも頼られる性質である。
 大人びた美貌と呼ばれる事も多いし、余分に生きている分ある程度はそういう部分も致し方ないのだろうが。
「……(電球マーク)」
 やはり冷静に考えて、そもそも私は頼りたい方なのだ。
 尊大で身勝手で、非才には到底及ばぬ――圧倒的な人物こそに尽くしたくなるのだ。
 それは恐らく性癖の類であり、もうちょっとマイルドに言うなら『好み』の問題だ。
「……いえ、ちょっと待って……?」
 そこまでブレインストーミングを進めてから私は思わず頭を抱えた。
 脳裏に過ぎったディーテリヒ様が私に向けてピースをしている……
「初心者にビギナーズラック押し付けて――あんな方、二度も居る筈ないじゃありませんか!!!」
 嗚呼それは――何とも絶望的な、事実だった。
執筆:YAMIDEITEI

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