PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

小鳥ちゃんの美味しい日常

関連キャラクター:秋月 誠吾

おくちのなかで花開く
「誠吾さんっ、誠吾さん!」
 今日も今日とてソフィリアは、幻想の様々な食文化に興味津々です。昨日は何を食べましたっけ。狩ったイノシシのステーキでしたっけ。「野性的なあじがします!」ともぐもぐ食べるソフィリアを見ていると、狩る為に罠を張ったりした手間をかけた甲斐があると誠吾も心が和らいだものです。
 そして今日は、街に出てみました。今日はスイーツの気分なのか、甘いものに興味を示すソフィリア。あれが可愛い、食べるの勿体ない、ああでも食べたらきっと美味しそう!

「誠吾さんっ」
「ん、何だ」

 何度も名前を呼ばれても、誠吾にとっては可愛いもので。
 ソフィリアがぱたぱたと小さな翼をはためかせながら、あれ、と指差しました。

「あれはお花ですか? パフェですか?」

 視線を送ると、「エディブルローズ」の文字が掲げられた菓子屋がありました。どうやら今売り出しているのはてっぺんに深紅の薔薇を掲げたパフェだそう。

「ああ。あれはな、食える花」
「お花が食べられるのですか!?」
「そうだよ。ソフィリアの故郷(くに)にはなかったか?」

 入ってみるか、と指差すと、はいと頷く可愛い小鳥。
 二人で扉を開くと、かろんかろん、ドアベルが古めかしい音を立てました。

「いらっしゃいませー」

 店員の声を聴きながら、出来るだけ奥の二人席に座る誠吾。ソフィリアという女性を連れているとはいえ、男が菓子屋にいるのはなァ、なんて恥ずかしがってしまうお年頃。
 一方でソフィリアは其の向かいに座って、店員が水とお手拭きを持って来るのをいまかいまかと待っています。

「ご注文はお決まりですか?」
「はいっ! パフェを下さい! 食べられるお花のパフェ!」
「エディブルローズパフェですね、お待ち下さい」

 店員は直ぐに把握して、笑顔で頷くと誠吾の方を向きました。あ、俺はブラックを。無難な注文をすませると、店員は奥へと注文を伝えに行きました。
 ちょっと早まってしまったかしら。恥ずかしそうにちぢこまるソフィリアを見て、今更恥ずかしがるのかよ、と笑う誠吾。

 そうしてパフェは届きます。
 今が旬のさくらんぼに、旬に入りそうな桃。様々なカットフルーツとホイップクリームをミルフィーユのようにサンドして、歯ごたえのありそうなフレークも加えて。
 そして何より! 頂点に咲き誇る、砂糖が雪のようにまぶされた薔薇の見事な事と言ったら!
 スプーンを片手に、ソフィリアは暫くパフェを見詰めて瞳を煌めかせていました。添え付けのフォークは恐らく、薔薇の為のものでしょうが――突き刺すだなんてそんな、勿体無い! ソフィリアは片手の指で薔薇を取り、ぺらり、と花弁をめくり取ると……ぱくり、と一口で食べてしまいました。
 砂糖の甘さと、食用に育てられた花特有の味。口の中にふわりと広がる強い香りに吃驚してソフィリアは瞬きをし、其の後に舌に広がる甘みに思わず頬を押さえました。

「あま~~~い! 美味しいです!」
「俺は実際食べた事ないけど、そんなに美味いか?」
「とってもとっても美味しいですよ! 誠吾さんも食べますか?」
「いや、俺はいいわ」

 お前が食べて美味しそうにしてるの見てたら、其れで腹一杯だし。
 ブラックの珈琲に、申し訳程度の角砂糖を一つ落としながら、誠吾は楽し気に目の前の少女を見るのでした。
執筆:奇古譚

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