幕間
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商ヨタの日常
商ヨタの日常
関連キャラクター:武器商人
- 良い夫婦の日
- 今年1番の葡萄酒を後ろからヨタカを抱き締める商人が、手ずから飲ませる。
二人がリビングでゆったり出来てるのは、理由がある。
それは昨夜のことだった。
いつになく真剣な顔をしたラスヴェートが商人とヨタカ、それから仕事に寄ったマネージャーを前に宣言した。
「あしたは『いい夫婦の日』なので、僕は京司さんのところに泊まります……!」
「「「えっ」」」
付き合いの長いこの三人の声が揃うのは実は初めてのことであった──のは、どうでも良くて。
突然の宣言に三人は困惑して……商人だけがははん、と検討ついたようにニンマリ笑う。
「またアイナ嬢に何か言われたね? 夫婦の時間は邪魔しちゃダメだとか」
アイナ嬢とはラスヴェートと仲良い学校のお友達だ。
上に姉がいるらしく、ちょっとおませでロマンチックな女の子である。
どうやらその子に言われて、たまたまいたマネージャーに泊めて貰おうと思ったらしい。
「……どうせホテル取るし、僕は良いけれど」
話を聞いていたマネージャーが商人を窺いつつ許可を出す。
心配そうなヨタカと商人が顔を見合ってアイコンタクトで相談する。
ややあってヨタカがラスヴェートと向き合う。
「それじゃ、お願いするけど……いい子でね…………?」
「はい!」
「それじゃあ、23日の昼には帰すから」
こうしてラスヴェートはいそいそと楽しそうにお泊まりの準備を終え、マネージャーと手を繋いでホテルへ向かった。
こうして商人とヨタカは、しばらくなかった二人きりの時間を楽しんでいるのだった。
机には普段、飲めないお高めの洋酒やブランデーケーキが並ぶ。
それらを二人で囲い、甘い時間を堪能することに夢中になった。 - 執筆:桜蝶 京嵐