幕間
商ヨタの日常
商ヨタの日常
関連キャラクター:武器商人
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- ご馳走の日
- 教育事業部での勉強を終えて、ラスヴェートが飛んで帰って来た。
「そんなに慌ててどうしたんだぃ?」
家で書類仕事をしていた商人受け止め、よしよしと撫でる。
ラスヴェートは商人のお腹にぎゅーっと抱きついてから顔をあげる。
「あのねっ、今日のテストで1番だったの!」
ほら見て、とラスヴェートが鞄から4教科分のテスト用紙を取り出す。
「すごいねぇ。それなら今夜はちょっと豪華な夕飯にしようか」
「やったぁ」
仕事から帰って来たヨタカにもテストの話をしたラスヴェートは、ご満悦顔で夕飯の席に着いたのだった。 - 執筆:桜蝶 京嵐
- My sweets
- ●
ちょっぴり難航しそうだった取引依頼を無事に済ませることができた。
サヨナキドリの顔たる武器商人が苦労をしている姿を見せることはないのだけれど、やはり相手に失礼のないようにしなければならない。ということを、ヒトの社会に紛れることで学び、流石に四年という月日が経ち伴侶まで迎えようものならば嫌でも理解はしてしまう。
そんなこんなで迎えた契約の日。つつがなく終えることができたともあらば、安堵と満足感、それから緩やかに押し寄せる疲労の波。
(さて、どうしたものか)
帰宅前にどこかで一服したって構わないのだけれど、愛しいひとと息子を待たせておく趣味は欠片もない。ので、ちょっとしたお祝いも兼ねて、二人へとプレゼントを持ち帰ることに。
「やァ。これを3つ、頂けると嬉しいんだけど!」
・
・
・
「ただいまぁ」
「ん、おかえり……」
「おかえりなさいっ」
ぎゅうっと、腕のなかに飛び込んだラスヴェートを撫で。愛しい小鳥の唇に口付けて掲げるは、白い箱。
「? それ、は……」
「ミルフィーユ。小鳥にも相談してた件のあれが上手く纏まってね。そのお祝い」
「わぁっ、お父さんすごい!」
「ラスの分もあるよ。お皿を用意してくれるかい?」
「うん! お父さんとパパさんの分と、あと僕の分も! 出してくる!」
たったったと廊下を走り出したラスヴェート。その弾む足音を聞きながら、綻んでいく口元。しあわせのありか。
どうかこの愛しい日々が、ずっとずっと続きますように。 - 執筆:染
- 『怖い夢を見なくなる前の話』
- ラスヴェート・アストラルノヴァは泣きべそをかきながらも真っ暗な廊下を進み、両親がいる寝室にたどり着いた。
時刻は真夜中――武器商人とヨタカ・アストラルノヴァは、すでに眠りについていた。2人の寝室のドアが遠慮がちにノックされ、ゆっくりと開かれる。ドアの間から漏れ聞こえる泣き声に反応したように、ヨタカはベッドから飛び起きた。
「ラス……どうしたの?」
ヨタカは半分寝ぼけた状態で、ふらつきながらもラスヴェートの下に駆け寄った。深刻そうなヨタカの声を聞いて、武器商人も目を覚ます。
涙をぼろぼろ流してしゃくりあげるラスヴェートをなだめながら、ヨタカは泣いている理由を聞き出す。
「こ……怖い夢を、見たの……」
その理由を聞いて、ヨタカは内心ほっとしつつもラスヴェートに寄り添う。
「そうだったのか……怖くて、目が……覚めてしまったんだね……」
ヨタカに背中をさすられるラスヴェートの目からは、涙があふれ続けた。ラスヴェートはすがるように頼んだ。
「今夜だけでいいから、一緒に寝てもいい……?」
すると、「もちろんだよ、おいで」と武器商人は即座に答えた。
ラスヴェートは2人の間に落ち着き、親子3人で川の字になってベッドの上に寝転ぶ。
2人を深夜に起こしてしまったことに対して、ラスヴェートはか細い声で「ごめんなさい」と言ったが、ヨタカはラスヴェートの頭をなでながら優しく語りかける。
「大丈夫だよ、ラス……。ラスが困ったときは、いつでも俺達を……頼っていいんだよ……。だから……謝らなくていいよ」
すでにうとうとしながら、武器商人はヨタカの柔らかな声音に耳を傾けていた。
ラスヴェートを寝かしつけようと優しく触れながら、武器商人は「偉いね、ラス」と切り出す。
「よく1人で来れたねェ。今日はちゃんと部屋まで来られたじゃないか」
「えへへ」と照れ笑いを浮かべるラスヴェートを、武器商人は愛おしそうに見つめていた。
ラスヴェートが寝息を立て始めた時、武器商人はぽつりとつぶやく。
「まだ『怖い夢』を見てしまうんだねェ」
不安が入り混じった眠たげな武器商人――紫月の一言を聞いたヨタカは、武器商人を励ますように言った。
「ラスなら、きっと大丈夫……。俺と、紫月がいれば……」
顔に血が上るのを感じながらも、ヨタカは武器商人への想いをささやく。
「ラスのことを、1番に考えて優しくしてくれる、紫月のそういうところが……大好きだよ──」
言い終わらない内に、ヨタカは武器商人が寝息を立てていることに気づいた。先に寝てしまった武器商人に対し、ショックというか安堵したような複雑な心境になったが、ヨタカもすぐに睡魔に誘われる。
かけがえのない存在──愛しい2人の寝顔を眺めながら、ヨタカ自身もこの上なく穏やかな気持ちで眠りについた。 - 執筆:夏雨
- あなたの
- 『【ソーダゼリー】シュワシュワしてて好きみたい。』
『【チキンの香草焼き】皮をパリッと焼ける様に練習。』
『【パエリア】シーフードを使った料理は積極的に挑戦したい。』
『【柚子湯】柚子を使った料理も探す。』
『【スンドゥブ・チゲ】分量を間違えて辛くし過ぎちゃったけど美味しそうに食べてた。意外と辛いの好き……?』
『【桃】昔、センキョウで食べたのが美味しかったって言ってた。どれも美味しそうに食べるけれど、果実そのままが一番好きそう。』
………
……
…
「小鳥? 日記を付けているのかい?」
「んーん……メモだよぉ。……『好きなものメモ』」
「……ふぅん?」 - 執筆:和了
- 親子三人、夏の夜
- 「ああ、とってもよく似合っているね。我(アタシ)の見立てたとおりだ」
「うん、さすが紫月だ。サイズもぴったりだね」
甚兵衛を着た愛息子を二人は眺め満足げに頷いた。
深い濃紺の星空の生地に夏の夜風に揺れる草花を裾にあしらった品の良い浴衣は武器商人が直々に選んだものだ。
月の様に明るいラスヴェートの金糸ともよく似合っている。
「パパさん、お父さんとお揃い……嬉しいな」
ふんわりはにかんだラスヴェートの手を取る二人の浴衣もおんなじ柄。
親子三人お揃いコーディネイトという訳である。
「じゃあ、行こうか。縁日楽しみだねぇ」
「花火も揚がるらしいよ。いい席取れるといいね」
右手はヨタカ、左手は武器商人。大好きなパパさんとお父さんと手を繋いで今日はお出かけ。
とっても楽しい夏の夜の出来事。
- 執筆:白
- 良い夫婦の日
- 今年1番の葡萄酒を後ろからヨタカを抱き締める商人が、手ずから飲ませる。
二人がリビングでゆったり出来てるのは、理由がある。
それは昨夜のことだった。
いつになく真剣な顔をしたラスヴェートが商人とヨタカ、それから仕事に寄ったマネージャーを前に宣言した。
「あしたは『いい夫婦の日』なので、僕は京司さんのところに泊まります……!」
「「「えっ」」」
付き合いの長いこの三人の声が揃うのは実は初めてのことであった──のは、どうでも良くて。
突然の宣言に三人は困惑して……商人だけがははん、と検討ついたようにニンマリ笑う。
「またアイナ嬢に何か言われたね? 夫婦の時間は邪魔しちゃダメだとか」
アイナ嬢とはラスヴェートと仲良い学校のお友達だ。
上に姉がいるらしく、ちょっとおませでロマンチックな女の子である。
どうやらその子に言われて、たまたまいたマネージャーに泊めて貰おうと思ったらしい。
「……どうせホテル取るし、僕は良いけれど」
話を聞いていたマネージャーが商人を窺いつつ許可を出す。
心配そうなヨタカと商人が顔を見合ってアイコンタクトで相談する。
ややあってヨタカがラスヴェートと向き合う。
「それじゃ、お願いするけど……いい子でね…………?」
「はい!」
「それじゃあ、23日の昼には帰すから」
こうしてラスヴェートはいそいそと楽しそうにお泊まりの準備を終え、マネージャーと手を繋いでホテルへ向かった。
こうして商人とヨタカは、しばらくなかった二人きりの時間を楽しんでいるのだった。
机には普段、飲めないお高めの洋酒やブランデーケーキが並ぶ。
それらを二人で囲い、甘い時間を堪能することに夢中になった。 - 執筆:桜蝶 京嵐
- 母の日はじめまして
- 「母の日ってどうしたらいい……?」
帰って来たラスヴェートに思ってもなかった質問をされたのは帰路の途中。
「………何か宿題だった……?」
不安げな顔をするラスヴェートにヨタカがベンチに座って聞く。
クラスの子達がそういう日があると話していたのを聞いたのだ。
だが、ヨタカも商人も「パパ」と「お父さん」だからお母さんありがとうは出来ない。
と言う事らしく、ラスヴェートは悩んでいたのだ。
「…俺も覚えてる限りはしたことないしなあ……」
そもそも母の日と父の日は旅人が持ち込んだイベントじゃないかな、と返す。
もしかしたらそうじゃないかも知れないが、ヨタカにはあまり覚えがなかった。
「……紫月に聞いて、知ってたらやってみようか……」
「誰に渡すの?」
「そうだな…ばあやに。彼女は俺やラスの母親じゃないけど、そういう風に愛してくれるから…………」
じゃあ決まりね、と二人は手を繋ぎ 直して再び帰路を歩き出した。
そしてその翌日、 話を聞いた商人も含めて三人でばあやを訪れて母の日のプレゼントを贈ったのであった。 - 執筆:桜蝶 京嵐
- はじめまして父の日
- 「パパさん、お父さん! いつもありがとう!」
学校から帰ったラスヴェートが、迎えに来た商人とヨタカに渡したのは折紙で出来た花束だった。
色とりどりで、時々ハートや動物の折紙も紛れ込んだ可愛い花束からは不思議と甘い香りがした。
「おや、ありがとーぅ。良くこんなに折れたね?」
「……本当に凄いや…。あれ、ちょっと香りある?」
「あのね、お兄ちゃん達が手伝ってくれたんだ。折り方と紙に香りを付けさせる方法とか」
二人の腕の中でにっこり笑うラスヴェートは手作りの花束を喜んで貰えたのが嬉しくて、上手に折れるまで練習した日々を話して今日はずっと頬が真っ赤だった。
- 執筆:桜蝶 京嵐
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