PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

商ヨタの日常

関連キャラクター:武器商人

『怖い夢を見なくなる前の話』
 ラスヴェート・アストラルノヴァは泣きべそをかきながらも真っ暗な廊下を進み、両親がいる寝室にたどり着いた。
 時刻は真夜中――武器商人とヨタカ・アストラルノヴァは、すでに眠りについていた。2人の寝室のドアが遠慮がちにノックされ、ゆっくりと開かれる。ドアの間から漏れ聞こえる泣き声に反応したように、ヨタカはベッドから飛び起きた。
「ラス……どうしたの?」
 ヨタカは半分寝ぼけた状態で、ふらつきながらもラスヴェートの下に駆け寄った。深刻そうなヨタカの声を聞いて、武器商人も目を覚ます。
 涙をぼろぼろ流してしゃくりあげるラスヴェートをなだめながら、ヨタカは泣いている理由を聞き出す。
「こ……怖い夢を、見たの……」
 その理由を聞いて、ヨタカは内心ほっとしつつもラスヴェートに寄り添う。
「そうだったのか……怖くて、目が……覚めてしまったんだね……」
 ヨタカに背中をさすられるラスヴェートの目からは、涙があふれ続けた。ラスヴェートはすがるように頼んだ。
「今夜だけでいいから、一緒に寝てもいい……?」
 すると、「もちろんだよ、おいで」と武器商人は即座に答えた。
 ラスヴェートは2人の間に落ち着き、親子3人で川の字になってベッドの上に寝転ぶ。
 2人を深夜に起こしてしまったことに対して、ラスヴェートはか細い声で「ごめんなさい」と言ったが、ヨタカはラスヴェートの頭をなでながら優しく語りかける。
「大丈夫だよ、ラス……。ラスが困ったときは、いつでも俺達を……頼っていいんだよ……。だから……謝らなくていいよ」
 すでにうとうとしながら、武器商人はヨタカの柔らかな声音に耳を傾けていた。
 ラスヴェートを寝かしつけようと優しく触れながら、武器商人は「偉いね、ラス」と切り出す。
「よく1人で来れたねェ。今日はちゃんと部屋まで来られたじゃないか」
 「えへへ」と照れ笑いを浮かべるラスヴェートを、武器商人は愛おしそうに見つめていた。
 ラスヴェートが寝息を立て始めた時、武器商人はぽつりとつぶやく。
「まだ『怖い夢』を見てしまうんだねェ」
 不安が入り混じった眠たげな武器商人――紫月の一言を聞いたヨタカは、武器商人を励ますように言った。
「ラスなら、きっと大丈夫……。俺と、紫月がいれば……」
 顔に血が上るのを感じながらも、ヨタカは武器商人への想いをささやく。
「ラスのことを、1番に考えて優しくしてくれる、紫月のそういうところが……大好きだよ──」
 言い終わらない内に、ヨタカは武器商人が寝息を立てていることに気づいた。先に寝てしまった武器商人に対し、ショックというか安堵したような複雑な心境になったが、ヨタカもすぐに睡魔に誘われる。
 かけがえのない存在──愛しい2人の寝顔を眺めながら、ヨタカ自身もこの上なく穏やかな気持ちで眠りについた。
執筆:夏雨

PAGETOPPAGEBOTTOM