PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

混沌で何か撃ってみた

関連キャラクター:マグタレーナ・マトカ・マハロヴァ

射止めたものは
「わぁっ! すごいや!」
 少年はサーカスの芸でも見たとでも言わんばかりにマグタレーナを見つめる。
 この日、とある孤児院の子どもたちとともに、彼女はバードウォッチングとちょっとした狩りを兼ねた依頼で森へ訪れていた。
 放たれた矢がヒュッと風を切り裂く音を立て、鹿や野兎の心臓を的確に捉える。
 そこそこ大きな獲物とはいえ、動いている的を一撃で仕留めるのは至難の業ということは、幼い彼らも理解しているが故に歓声が上がる。
 そんな彼らに、目を閉じたままマグタレーナが微笑んだ、その時。

 「あのね!」

 先の少年が、マグタレーナに呼び掛ける。その白い肌は、少し赤らんでいた。
「ボク、お姉さんみたいにカッコよくて綺麗な人と結婚したい!」
 どうやら幼き少年の一目惚れ、ということらしい。
 それ動じることなく、彼女は慈しみ深い笑みを湛えて少年の前に屈み、その頬に手を添えた。

「そのようなことは、貴方がもっと大きくなって、大切な人ができたら伝えてあげるのです。それに」

 ──わたくしは既婚者、なんなら新婚ですのよ?
 だって彼女も、亡き夫に心を射止められたのだから。
執筆:水野弥生

PAGETOPPAGEBOTTOM