幕間
くっ、ころせっ!!!!
くっ、ころせっ!!!!
関連キャラクター:シフォリィ・シリア・アルテロンド
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- こんなところに触手モンスターが!
- 「くっ……こんな……」
手足を絡めとる太い蔦を恨めし気に見やる。シフォリィは目の前の形容しがたい植物系モンスターに不覚を取り、絶賛拘束中なのだった。
「まさか距離を取ろうとしたら足を掬われるなんて……なんですか。ここまできて何もしないんですか、ちょっと」
拘束はされたがしかしアクションがない。蔦は変わらず彼女の肢体を縛り、地面に転がすがままである。うら若き乙女を拘束して放置とは何を考えているのか。というか体勢が地味につらい。せめて楽な姿勢になりたい。
芋虫の真似事をしようにも食い込んだ蔦はびくともせず、ただ時間だけが無為に過ぎていく。
――ガサ、ガササッ
「っ!」
「おお、かかっとるかかっとる……って嬢ちゃんなにしとるんだべ?」
木々をわけて姿を見せたのはこの地元の狩人。影の向きが変わり、得体のしれないモンスターにみえていた案山子の姿もハッキリとしていた。
「……くっ、ころしてください」
「突然何を言い出すんだべや!?」
記録には残されない、というか記憶から消したいある日の一幕。
- 執筆:鴛乃
- 選択
- どろり――青々としていた眼球の裏側に、奇妙な、知りたくもない感触が粘り憑いた。
ずるりと奥へ奥へと浸透していくような、振盪していくような怖気が脳漿を掻き乱していく。
不安感と恍惚感の狭間で狂わされる、そういう類の冒涜が回路を圧迫してきた。
現状を把握する事は難しいだろう。夢想の内だと解かれた方がまだ真面だ。
惰性に貪られたところで擽ったさだけが神経に障る。
これは誰かの仕組んだ身投げなのでは――いっそ今直ぐに咀嚼され、消化されて終いたいものだ。
側頭部か後頭部を殴りつけられた、幻痛、衝撃に全身がふるえる。
ホワイト・アウトの覗き穴から化生の輪郭を認識しようと――塑れは予感の通りに蠢動した。
塗りたくる、染めていく、蜿蜒と合奏が続く――初めましてと目玉があった。
くっ――!
逸らす事も赦されない。抗うほどの気力も残されていない。ぐばぁと嘲笑う顎が魔王の如くにお辞儀した。
ころしなさい。ころしてください。お願いですから――。
「こんな感じの同人誌にしたいんですが如何です? ホラーとへっちは相性良いと思うんですよ。あと絶望する感じで……」
「やめてください!!! あと本人を前にして説明するのはどうかと思います! いや無断で書かれるよりはマシですけど!」
「じゃあ堕ちるパターンにしますか?」
「ころす!!!」 - 執筆:にゃあら
- かたく、こわばるもの
- 薄暗く何処ともわからない洞窟の奥底、じっとりとした湿気が不快感を主張してくる。
どれほどの時間が経ったか。お天道様の目が届かないこの場所では時間の感覚もわからない。
そんな未開ともいえるこの洞窟を、シフォリィは小さなランタン一つという目の前を照らすにはいささか弱すぎる灯りを頼りに進んでいく。
「このまま、何事もなく進むことができれば良いのですが──」
そんなことを考えながら洞窟を進んでいくうちに、少し開けた空間に出たのだが──その空間は、どこか異質なものだった。
視界も広く、両サイドの壁側に一定間隔で備え付けられた松明が周囲を照らしているからか、奇襲を仕掛けるには不向きとも思えるほどにそこは明るい。
──その上で彼女の目を引いたものは、花道を開けよと言わんばかりに置かれた石像たちだ。
「……っ!」
あまりにも人間じみて見える石像の数々に、シフォリィは思わず息を呑んだ。
まるで先程まで本当に動いていたかのように見えるそれらは、上に前にと手を伸ばしていて。
──あるものは助けを求め、またあるものは必死に抗っているような、そんな顔をしている。
「ここにある石像の数々……年頃の女性をかたどったものが大変多いような気がしますね。表情も含めてこのようなものばかり作らせるというのは……少々悪趣味が過ぎないでしょうか」
そんな気味の悪いギャラリーも半分くらいに来たところで、突如シフォリィは歩みを止めた──いや、正確には「彼女の歩みが止まった」、といったところだろうか。
ピキッ、という窓ガラスにひびが入るかのような音が、洞窟内に響いた。
「え?」
ふと彼女がその足元を見遣れば、先程までそんな色ではなかった履物の色が薄墨色に染まってきている。
不味い、とその場から走って逃げだそうにも足首が固まってしまい動かない。
「くっ……これ、は……!」
どうにかして身体を動かそうと足掻こうとするものの、薄墨色の範囲が広がっていき痛みを伴って身体の自由が効かなくなっていく。
「っ、これは……まさか……!」
もう一度周りの石像群を見渡すと、最悪のシチュエーションが頭をよぎる。
あまりにもリアルすぎるそれらのうちの一つと目が合った瞬間、ゾクりとした寒気が彼女の背中を撫でた。
その恐怖を打ち払わんとすべく、彼女はブンブンと強く首を振る。
「こんなところで、おわるわけ、には……!」
そんなシフォリィの抵抗をあざ笑うかのように、膝の上、太ももあたりまで浸食がすすんだあたりで、彼女は意識が遠のいていくのを感じた──心なしか、つま先から上に向かっていく温かさが、痛みすら心地よさに変えていきながら。
「こんな、まやかし、に……屈して、は……!」
荒い呼吸が、石化のスピードを速めていく。藻掻き続けてついに輪郭まで浸食が進む頃には、抵抗は悲壮感の中に少し快感が入り混じったような声にならない叫びに変わっていた。
──くっ、ころし、ころして……
「ころしてください!!」
そんな自分の大声で、シフォリィは自分のベッドで目を覚ました。
飛び起きた彼女の額には、うっすらと汗が滲んでいる。
「あぁ……夢、ですか……昨日はずっと依頼で洞窟を歩いてたせいで、こんなとんでもない夢を見たのでしょうか……いたた……」
そういって、彼女は再びもぞもぞと寝床に潜り込む──前日洞窟探索で歩いたりしゃがんだりした影響でついてきた「筋肉痛」というオマケとともに。 - 執筆:水野弥生
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