PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

モブハント

関連キャラクター:Gone

Gone・of・the・seeker。或いは、改心する男…。
●ある盗賊プレイヤーの証言
 あぁ、あんたらこの先に進むのか?
 だったら悪いことは言わねぇ、止めておいた方がいい。
 別に意地悪で言ってるわけじゃねぇぜ? 盗賊の俺が何を言っても信じられねぇかもしれねぇけどよ、今回ばかりは本気も本気さ。
 なんでって?
 俺ぁ、これから真っ当に生きるって決めたからだよ。つまりこの忠告は、元盗賊の俺がする人生で最初の善行ってわけだ。
 話、聞く気になったかい? あぁ、ありがとう。俺に人助けをさせてくれて、本当にありがとう。このままあんたらを先に行かせたら、明日食う飯が不味くなって仕方ねぇと思ってたんだよ。
 さて……どっから話すべきだろうな。
 まず最初に、この先にある小さな遺跡はさっきまで俺のアジトにしてたとこだ。周囲にモンスターの類はいねぇし、罠も全部解除済み。盗むようなお宝もねぇんで、だぁれも近づきゃしねぇ。つまり、俺みてぇなならず者が隠れ潜むのには最高に都合のいい場所ってわけだ。
 ここに拠点を構えて随分経つが、1回だって俺ぁ身の危険を感じたことは無かったんだ。
 まぁ、これもさっきまでの話だよ。
 安全だったはずのアジトで、俺ぁ危うく死ぬとこだった。くそっ……今思い出しても、身体が震えてたまらねぇ。あぁ、ちくしょう。何だか骨から寒くなってきやがった。
 なぁ、酒持ってねぇか? ある? じゃあ、悪いんだが話の駄賃代わりってことで、1本貰うわけにはいかねぇか?
 酒で体をあっためなきゃ、きっと数分後には俺ぁ凍えて死んじまうよ。

 ……。
 ふぅ、生き返ったぜ。
 これでようやく“アレ”の話が出来るだろうさ。
 “アレ”ってのが何かって? それは俺も知らねぇよ。だが、間違いなく碌なもんじゃねぇ。古い絵画に描かれた死神を見たことはあるか? あるんなら、話は早い。俺が見たのは、俺の後ろに突然姿を現したのは、まさにその“死神”さ。
 気配はなかった。
 音も無かった。
 黒い襤褸……ローブを纏って、柄の長い大鎌を構えたバケモノ。ローブの下にあったのは影か闇だ。少なからず生きてる奴にあるはずの温かみってぇのかな……ねぇんだよ。そういうのが一切。
 あるのはただの闇さ。それも、底の見えない真っ暗闇。あの闇の先には、きっと地獄があるに違いねえ。一瞬、俺は固まったよ。死んだと思ったね。生きることを端っから諦めちまったんだ。
 あいつはそんな俺をあざ笑うみたいに、ただじぃっとそこに立ってた。
 目も口も無い顔で、俺のことを、無様な俺の姿を眺めていたんだ。
 俺が生きて逃げられた理由?
 そりゃあれだ、あんたらの声が聞こえたからさ。
 それで俺は正気に戻って、一目散にここまで逃げて来たんだよ。
 ってことはあれだ。
 あんたら、言わば俺の命の恩人ってことだよな。
 よかったぜ。
 命の恩人を救うことが出来たんだからよ。
 さぁ、話は終わりだ。街へ戻ろう。
 生きて帰れた祝いによ、一緒に飯でも食わねぇか?
執筆:病み月

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