PandoraPartyProject

幕間

モブハント

関連キャラクター:Gone

(クエストでバグったエネミーを倒しただけなんだけどなあ)
「oi おい やべえぞ」
「どうした落ち着け」
「翡翠●●エリアに常駐してるbotいるだろ」
「あああの悪名高いひたすらスライムを倒し続けて素材荒稼ぎしてるやつか、それがどうした」
「俺見ちまった、そのbotが突然影から現れた死神みたいな奴に真っ二つにされて一撃で殺されたんだ」
「一撃? そんなわけないだろ、あいつ再生力異常で倒せないんじゃ」
「いや、本当にすごい火力で一撃 多分魔法属性」
「マジかよ、それならS級モブか稼ぎ防止用のペナルティか…」
「今度ギルドの皆であそこでスライム狩りしようぜ、かっけえ鎌持ってたしレアアイテム落とすかもしれn」
「だな!」
ゴミ拾いしてたら感謝された
「最近、いらないドロップアイテムが気づいたら消えてるんだけど、マクロとかやられてるんかな?」
「でもマクロ対策万全だからありえねぇと思うんだよな。透明化とかいるのか?」
「いや透明化でもプレイヤーにはうっすら見えるだろ。うーん、なんなんだろう?」
「でもまあ、いらないアイテムを拾う手間がなくなるから助かるといえば助かるよな」
「正直連続で狩りしてたらドロップ品が邪魔でレア品が拾いづらくなるからなー」
「そういや装備とかレアドロップ品は消えてないのか?」
「消えてない消えてない。装備品とかレア品等は全然消えない。マジでいらないドロップアイテムだけ」
「へー、いいなそれ。俺のところにも来ねぇかなあ」
「お、ちょうどいい所に向こうからモンスターの群れ来たぞ。アレを狩って検証してみようぜ!」
「そうだな、やってみようぜ!」
「今もいるといいんだけどなー」

「おつー」
「お疲れー」
「おつー。いた?」
「いたのかなー。わかんね」
「でも狩った数に比べてドロップ品少なくない?」
「うわーマジでいるのか。ありがてぇ~」
「クズアイテム拾わなくていいの本当に助かる。誰だかわからないけどありがとう!」
「ありがとう! 聞こえてるかわからないけど!」
「ありがとう! 本当にありがとう!」
Gone・of・the・seeker。或いは、改心する男…。
●ある盗賊プレイヤーの証言
 あぁ、あんたらこの先に進むのか?
 だったら悪いことは言わねぇ、止めておいた方がいい。
 別に意地悪で言ってるわけじゃねぇぜ? 盗賊の俺が何を言っても信じられねぇかもしれねぇけどよ、今回ばかりは本気も本気さ。
 なんでって?
 俺ぁ、これから真っ当に生きるって決めたからだよ。つまりこの忠告は、元盗賊の俺がする人生で最初の善行ってわけだ。
 話、聞く気になったかい? あぁ、ありがとう。俺に人助けをさせてくれて、本当にありがとう。このままあんたらを先に行かせたら、明日食う飯が不味くなって仕方ねぇと思ってたんだよ。
 さて……どっから話すべきだろうな。
 まず最初に、この先にある小さな遺跡はさっきまで俺のアジトにしてたとこだ。周囲にモンスターの類はいねぇし、罠も全部解除済み。盗むようなお宝もねぇんで、だぁれも近づきゃしねぇ。つまり、俺みてぇなならず者が隠れ潜むのには最高に都合のいい場所ってわけだ。
 ここに拠点を構えて随分経つが、1回だって俺ぁ身の危険を感じたことは無かったんだ。
 まぁ、これもさっきまでの話だよ。
 安全だったはずのアジトで、俺ぁ危うく死ぬとこだった。くそっ……今思い出しても、身体が震えてたまらねぇ。あぁ、ちくしょう。何だか骨から寒くなってきやがった。
 なぁ、酒持ってねぇか? ある? じゃあ、悪いんだが話の駄賃代わりってことで、1本貰うわけにはいかねぇか?
 酒で体をあっためなきゃ、きっと数分後には俺ぁ凍えて死んじまうよ。

 ……。
 ふぅ、生き返ったぜ。
 これでようやく“アレ”の話が出来るだろうさ。
 “アレ”ってのが何かって? それは俺も知らねぇよ。だが、間違いなく碌なもんじゃねぇ。古い絵画に描かれた死神を見たことはあるか? あるんなら、話は早い。俺が見たのは、俺の後ろに突然姿を現したのは、まさにその“死神”さ。
 気配はなかった。
 音も無かった。
 黒い襤褸……ローブを纏って、柄の長い大鎌を構えたバケモノ。ローブの下にあったのは影か闇だ。少なからず生きてる奴にあるはずの温かみってぇのかな……ねぇんだよ。そういうのが一切。
 あるのはただの闇さ。それも、底の見えない真っ暗闇。あの闇の先には、きっと地獄があるに違いねえ。一瞬、俺は固まったよ。死んだと思ったね。生きることを端っから諦めちまったんだ。
 あいつはそんな俺をあざ笑うみたいに、ただじぃっとそこに立ってた。
 目も口も無い顔で、俺のことを、無様な俺の姿を眺めていたんだ。
 俺が生きて逃げられた理由?
 そりゃあれだ、あんたらの声が聞こえたからさ。
 それで俺は正気に戻って、一目散にここまで逃げて来たんだよ。
 ってことはあれだ。
 あんたら、言わば俺の命の恩人ってことだよな。
 よかったぜ。
 命の恩人を救うことが出来たんだからよ。
 さぁ、話は終わりだ。街へ戻ろう。
 生きて帰れた祝いによ、一緒に飯でも食わねぇか?
執筆:病み月
死神
 鬱蒼とした暗い森の中に二人のプレイヤーがいた。
「ここはまずいって! さっさと引き返そう」
「どうしたんだよ?」
 仲間の取り乱し様に男は呆れた声を出す。
「お前、ここの噂を知らないのか?」
「何のことだよ?」
 仲間は安全を確認するようにあたりを見回すと静かに話し始める。
「ここには、死神が出るんだよ」
「死神?」
「ここで少しでも大きな音を出すと、その死神がどこからともなく現れて、鎌をもって走ってくるんだ」
 冷たい風が肌を撫でた。心なしか、どこか森が暗くなったように感じる。男は気を紛らわせようとわざと大きな声で笑ってみせた。
「そんなもんいるわけないだろ! せいぜいレアエネミーかなんかだろうさ」
「おい! やめろ!」
 仲間は慌てて男の口を手でふさぐ。
「俺だって最初はただの噂だと思ってたさ。でも違ったんだ。少し前、俺もここでそいつに会ってみようとしたんだ。レアエネミーならいいドロップが手に入るかもしれないしな。だが、それが間違いだった」
 仲間はおびえたように周囲を見渡す。さっきまではそよ風しか吹いていなかったのに、木々はがさがさと大きな音を立てている。
「そいつは本当に現れたんだ。そして、凄まじい速さでこっちに近づいてきた。遠くからでもわかった。あれは俺なんかじゃかなわな……」
 仲間の声が途切れた。目をかっと見開き、震える指で後ろを刺す。
 見てはいけない気がした。感覚で分かった。そこに何かがいることに。しかし体は自分の意思に反して後ろを向いてしまう。
 最初は何だかわからなかった。木々の闇からより黒い何かが近づいてるのがかろうじて見えるだけ。だが、その姿は次第にはっきりとしていく。手には大きな鎌を持ち、真っ黒なフードを被る死神の姿が。
 二人の絶叫が森に響き渡った。
執筆:カイ異

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