PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

食べないでください!

関連キャラクター:ベーク・シー・ドリーム

子供ってすごく残酷
 今日の1日は何をしよう。今日はきっと楽しい日になるだろうな。などなどを考えながらも、うきうきるんるんとベークは街の中を歩く。
 その姿が周りからどう見えているかなんて気にすることなく、わっくわくでスキップまで交えて歩いていた。

 そんなふわっふわゆるっゆるな1日を彩るように、子供達の姿が目に映る。
 子供達は皆楽しそうに遊んでいたが、ベークが近くを通りがかった瞬間に子供達の視線が移される。

「あっ! たいやき!」
「たいやき!? どこどこ!?」
「ほらあそこ!」

 まあなんて可愛らしい子供達の声なのだろう。ベークはやっぱり気にすることなく、むしろ注目浴びてるなぁ、ぐらいにしか思っていなかった。
 おかげで子供達が散歩中なベークの後ろを一緒に歩いていることなんて気づかないまま。キラキラとした眼差しさえも見えないまま。

 どのぐらい歩いたか覚えてないけど、止まる度になんだか尻尾辺りが触られたような気がする。っていうかちょっと触られた。きゃーえっちなんて言う暇も無く。
 それだけ子供の好奇心というのは強く、そして離れないもので。

「ねえねえ、食べてみてもいいかな?」
「バカ、食べたら怒られるだろ!」
「でももう、いい匂いで限界だよぉ」

 ベークが歩けば歩く度に辺りには良い匂いが広がるのは、街の中では常識だ。
 香ばしく焼けた小麦粉の皮はほんのりとした甘さが含まれており、良い焼き加減なのだと知らしめて。
 ついでにちょっぴり固めに焼けた尻尾は、また別の香ばしさを含んだ風を周辺に送り込む。

 その中身はなんだろうな。あんこかな。カスタードかな。チョコレートかな。
 ああ、齧り付いてしまいたいと、子供達の食欲が止まらない。

 ……とは言えベークは本来たい焼きではないので、食べても鯛の味しかしない。
 それだけが子供達には残酷な事実となるのだが、その事実を伝えられる人物――ベークは今や命の危機だと汗がダラダラ。

「ううう、我慢できない我慢できない!」
「た、たた、食べちゃう? 食べちゃう?」
「逃げられる前に食べちゃおうか……??」

 なんか子供達の相談話まで聞こえてきた。
 ちょっとそろそろヤバい気がしてきたベークは、すさささーと音もなく走って逃げた。

「あっ、逃げた!」
「だめー! おやつー!」
「おやつ!? いやいやいや僕はおやつじゃないんですが!?」
「たいやきのくせにおやつじゃないなんて嘘だーー!!」
「食べさせろーー!!」
「ぎゃーー!!??」

 この日、楽しくなるだろうなと思った1日は子供達との追いかけっこで全部消化される。
 後日ベークは本当に食べられたが、食べた後の子供達の表情は……お察しください。

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