幕間
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希望が浜ヒーロー奇譚
希望が浜ヒーロー奇譚
関連キャラクター:山本 雄斗
- Hero Show Time
- 「フハハハ! この街は俺のものだ!」
怪人アクニーンが、ステージ上で高笑いを披露する。
「この街から始めて、隣町を徐々に侵略し、希望ヶ浜、ひいては再現性東京全体を我が物にするのだ! 最終目標としては十年以内に混沌世界のすべてを征服するぞ!」
「な、なんて堅実な侵略計画なの! 誰かがこの怪人を止めないと! 誰か、助けて~!」
アクニーンとMCのお姉さんのコミカルなやり取りに、観客の子どもたちはキャッキャと笑いながら、ステージに釘付けになっている。
いったい、誰が助けにやってくるというのか。本日のヒーローはこの人である。
「待てーい!」
颯爽とステージにヒーロースーツ姿の男が登場する。
「だ、誰だ貴様は!?」
「自分は宇宙の保安官、ムサシ・セルブライト! 悪は決して許さないのであります!」
ムサシの登場に、観客の子どもたちはワーワーと歓声を上げ、大人たちは拍手をする。
そう、ムサシはとあるデパートの屋上でヒーローショーに参加していた。
ヒーローショーに出演する予定だったヒーロー役が急病で出られなくなり、ムサシが代役として抜擢されたのである。
「宇宙の保安官だとぉ? 随分大きく出たものだ。しかし、この人質が目に入らぬか?」
「きゃー、助けてムサシ!」
MCのお姉さんはアクニーンに捕まり、悲鳴を上げている。
「なんと卑怯な!」
「なんとでも言え、卑怯でもなければ悪人などやっとらん! さあ、人質の命が惜しくば、私の前から去るのだ!」
「くっ……」
もちろん、これは演技である。
「背後ががら空きだぞ、怪人アクニーン!」
「な、なにィ!? ぐわぁ~!」
そこへ、ヒーロースーツ姿の本雄斗の飛び蹴りが、アクニーンに決まった。
実は、雄斗もヒーローショーにスカウトされていたのだ。
「こうして、町に平和が戻りました! ムサシ、雄斗、ありがとう~!」
ヒーローショーは、拍手喝采で終了したのだった。
「ムサシさん、楽しかったですね、ヒーローショー!」
「そうでありますな。雄斗さんも飛び蹴り、かっこよかったであります!」
デパートで買った鯛焼きを食べながら、二人は帰り道を歩いていた。
「僕、アクション俳優になるのが夢で……だから、今日のヒーローショーはその夢に近いから、出られて嬉しかったな」
えへへ……と雄斗は照れ笑いをする。
希望ヶ浜のヒーローの将来が楽しみでありますな、とムサシは微笑ましい気持ちで雄斗を見つめるのであった。
- 執筆:永久保セツナ