PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

アルトバ文具店(営業中)

関連キャラクター:古木・文

拝啓、あなたへ
「文さーん! シーリングスタンプちょうだい!」
 元気な声で古木・文はそちらに顔を向けた。
 そこにいたのは近所のパン屋の看板娘。元気で器量よしと評判の少女だ。
「封蝋ですか」
「そそ、最近流行ってるんだあ」
「そうなんですね」
 接客スキルのなさゆえか途切れる会話。少女は気にすることなく棚に並んだ封蝋を眺め始めた。

 封蝋とはいえ形も色も様々だ。
 彼女が求めているのはどのようなものだろうか、と文が眺めているとふと気づく。
 封蝋を丁寧に見つめる彼女の瞳が愛おしいものをみる眼をしていることに。
「お手紙ですか?」
「え。う、うん! どうしてわかったの!? そんなに顔に出てたかな!?」
 自分の頬に手を当てる彼女は可愛らしく、そしてまた文の質問が図星であることを指していた。
「あの、あのね。素敵なシーリングスタンプは恋の御守りなんだって。だから私も、遠くにいる好きな人に手紙を書きたくて」
 彼女にとって封蝋は自分の想いが無事に届くための御守りでもあるのだろう。
 そう思った文は僅かに頬を緩めた。
「それは素敵なものを選ばなければなりませんね。私にもお手伝いさせてください」
 いいの!? と喜ぶ彼女にもちろん、と呟いて。
 願わくば。手紙を守る封蝋が彼女の大切な恋を運んでくれますようにと。
 そっと願いを込めた。 
執筆:凍雨

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