PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

アルトバ文具店(営業中)

関連キャラクター:古木・文

ミルクの微笑み
「おや」
 くりくりとした愛らしい目と視線が交差した。店に置いてあるインクの色に喩えるならば檳榔子黒が近いだろうか。
 えーと……と棚を見ている母親の背中に背負われた赤子が文を真っ直ぐに見つめている。ふくふくした頬と手足は丸みを帯びて可愛らしい。小さく手を振ると、にへぇと楽しそうに笑って足をバタつかせた。と、同時に。
 ガチャンっ、ドササっ。
「あっ」
「え? あ?! ごめんなさい!!」
 近くにあった筆のコーナーが赤子の足に蹴られ派手な音とともに落下した。事態を察した母親が真っ青な顔で慌てて拾っている。
「べ、弁償します……!」
「大丈夫ですよ」
 拾いながら筆の状態をチェックするが、幸いにも傷ついたものはない。何度も頭を下げる母親にどれも傷ついてないからと言えば漸く安堵した表情を見せる。
 そんな母の気も知らず赤子は満足そうに文を見て笑っていた。
「可愛らしいですね、おいくつですか?」
「つい先日、半年になったばかりで」
「ああ、それは可愛い盛りだ。良かったらこの子見てますから、ごゆっくりお探しくださいね」
「ありがとうございます……!」
 母親から赤子を受け取ると、暖かさと適度な重みに口元が緩む。
「君も大きくなったら、うちの店に来てくれよ?」
「あぅ」
 伸ばされた小さな手はほんのりミルクの香りがした。
執筆:

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