PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

アルトバ文具店(営業中)

関連キャラクター:古木・文

リコレクション・ブルー
●青い海

 きょろきょろと店内の棚に処狭しと並んだインクを眺める女性客が一人。
 棚の上から下まで右往左往し、随分と熱心だ。その割にサングラス着用なのが聊か違和感を感じる。じっと手元の何かを見つめ、それからカウンターに座る文の元へ歩いてきた。
 これは『何々ありませんか?』と聞かれるパターンだと経験で悟る。
「すみません、この色のインクを探しているのですがお取り扱いしていますか」
 女性から差し出されたのは見知らぬ男と共に眼前の女性が海を背にして映った笑顔の写真。時間帯は夕暮れ、沈む夕日に海面は紫に染まり、天は朱と紺のグラデーション。
「どちらの色をお探しですか」
「どちらの?」
「はい。海か空か、もしくは太陽の色ですか?」
 しばらく黙する女性に、文は答えを待つ。こういう『訳あり』っぽい客も随分と慣れた。意を決したのか女性は困った様に笑い返す。
「ごめんなさい、わかりません」
「わからない?」
「私、色の区別が出来なくて。この写真も辛うじて陰影を区別出来るくらいで……あっ、探しているのは海の色です。海は青、でしたよね。爽やかな色だとか」
「……此方に」
 インクを案内すると、即座に購入し一礼。
「ありがとうございます。これで――彼の棺に手紙を入れられます」

 ――彼女に渡したインクは、浅葱色した晴れやかな……。

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