PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

アルトバ文具店(営業中)

関連キャラクター:古木・文

大切なスタンプ
「おにいさん、おにいさん。これとおんなじの、ない?」
 今日のお客は小さな女の子だった。走って来たらしく息を切らせて、どこか泣きそうな顔で聞いてくる。文が差し出された手を見やると、そこには小さなスタンプがあった。インクを付けて押すタイプのものだ。だが木でできたそれは真ん中からぱっきり折れてしまっている。
「探してみますね」
 確かにこれでは使えないな、と納得したように頷いて同じようなものを探す傍らで女の子が言う。
「たからものなの。プレゼントでもらって、だいじにだいじにつかってたのに、おとして、こわしちゃった」
 泣くのを我慢しているような声、それを聞いて文の手が止まった。大切なそれの代わりに同じものを用意するのはなんだか躊躇われて。
「それ、借りてもいいですか?」
「いいけど……」
 だから、壊れたスタンプの持ち手の部分だけ変えることにした。作業場に行ってスタンプの部分だけ元の部分から切り離し、新しい持ち手となるものとくっつけてあげたらすぐだ。

 新しい持ち手になったスタンプが帰ってきて、女の子はとても喜んだ。
 買おうとしていたスタンプの代わりに花のスタンプと紫陽花色のインクを買って帰っていったという。
執筆:心音マリ

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