PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ノルダインの一幕

関連キャラクター:ルナ・ファ・ディール

国境付近:偵察
 鉄帝北部で、緊張感が高まりつつあったが、まだ「焦げ臭い」くらいですんでいたころのことだった。
「アイツらに会えなくってさみしいって?
いろいろあんだよ男には」
 狼が届いた手紙をしきりに読んでいる。字は読めないが、においを読むのだ。くんくんくんくん嗅ぎまわって、ベルカがジルーシャ・グレイ(p3p002246)からの手紙を離さない。
「ま、また会えるだろ、多分……」
 ノーザンキングスが鉄帝と火花を散らすのは、いつものことだ。
 きっと、イレギュラーズたちと出会わなければ、ラグナルはなにをしようとも思わなかっただろう……せいぜいが良くて体を鍛えるくらいなものなのだが、今回ばかりは、なぜか余計な首を突っ込みたくなった。国境の近くまで、そっと偵察に来たわけである。
「ただ突っ立っているだけじゃリーダーとはいえないよな?」
 とはいえ、できることと言ったら買いだしのついでに話を聞いたり、品薄なものを把握したりするくらいであるが。
 盤面をよく見ろ。耀 英司(p3p009524)にならって……。裏を読み、誰がどう得するかを……。
(……わからん)
 狼たちのほうがよっぽど、わかっているのではないだろうか。仕事さえなければ、わだかまりなくイレギュラーズたちに駆け寄っていくだろう。勝手に人が引いた国境線など飛び越えて……。
「ワン」
「ワンではないだろ!?」
 若い狼の一匹は、ラグナルが考え事をしている間に鉄くずを掘り出していた。リュカシスの活躍を目の当たりにしてからというもの、勝手にどっかからガラクタを掘り出して、鎧めいてまとう始末である。しかしながらスピードを落とすことはないくらい筋肉質で、これは、結構よいのではないか……。
(狼のほうが賢いよな、やっぱり)
 いっそ群れのリーダーをベルカたちに譲ったらなんとかなるんじゃなかろうか。
「よーしよしよし好きにやってみよう。俺は指示しない。けどしっかり見てるからな」
 主導権を放棄したラグナルに、ベルカとストレルカが、冷ややかな表情をしている気がする。
 力強く駆ける馬の蹄の音。交易のための馬車が通りすぎ、ラグナルはびしっと背筋を伸ばしたが、ただの馬だ。ルナ・ファ・ディール(p3p009526)の疾さはあれほどではないし、狼たちはわかっていて微動だにしなかった。
執筆:布川

PAGETOPPAGEBOTTOM