PandoraPartyProject

幕間

Chat in the Stella Bianca

ここは昼間は軽食喫茶 兼 夜はバーの"Stella Bianca"
今日もオープンキッチンでは店主のモカ・ビアンキーニが働いています。
(チリンチリーン)
おや、お客様の来店でしょうか……。
「いらっしゃいませ!」


関連キャラクター:モカ・ビアンキーニ

ステラビアンカで昼食を
 モカ・ビアンキーニの経営するステラビアンカ。昼は軽食、夜はバーの飲食店だ。時間は昼。和服の女性が来店した。
「いらっしゃいませ」
 モカが挨拶をする。女性は少しおろおろした様子でしかめっ面だ。着席しメニューをしばらく眺め。
「ナポリタンを」
 そう注文した。
「かしこまりました」

 玉ねぎ、ウインナー、ピーマン、マッシュルームを手早く切り、パスタを茹でる。炒めた具材とケチャップやソース砂糖とからめ手早く料理を仕上げる。
「お待たせしました」
 ナポリタンを目の前にした女性はぱぁっと笑顔になるが、またけわしい顔戻る。フォークを取るがどうにもぎこちない。

「お客様こちらを」
 モカが女性に渡したのは箸だ。
「……いいんですか? マナー違反じゃないかしら」
「当店ではそのようなことはありませんよ。そうだな、あえてステラビアンカの決まりを言うなら『お客様に美味しくご飯を食べて頂きたい』かな、なんて」
「まぁ」
 それでは、と女性は箸を器用に使いナポリタンをほおばる。美味しい、とはにかむ様子にモカも釣られて笑顔になる。
「でも私がどうして豊穣出身だとわかったんですか?」
「ウォーカーのかたの可能性もあったんだけど……和服はやっぱり印象的だね。賭けではあったけど豊穣から来たのかなと。今の季節にぴったりなあやめの和服お似合いですよ」
「何でも知っているんですね」
 豊穣から来た女性はモカに幻想の観光スポットなど、あれやこれやと談義に花が咲いた。
執筆:7号
ようこそ、Stella Biancaへ

 ある日の、よく晴れた昼間の幻想国。
 Stella Biancaに夫婦と子供のお客がやってきた。

「いらっしゃいませ!」

 店主モカ・ビアンキーニのハリのある声が店内に響き渡ったかと思うと、子供のほうがびっくりして母親の後ろに隠れる。
 脅かしてしまった事に気づいたモカは、カウンターを少し離れて子供へと小さく笑いかけて謝罪。お詫びに良い席へと案内するから、と親子連れをテーブル席へと導いた。

「さあ、ここだよ。外を見る時は靴を脱いでね」
「わ、わーー!! すごい、すごーい!」

 小さな子供でもくつろぎやすいソファに、ピカピカに磨かれたテーブル。
 テーブルの上に鎮座する小さな観葉植物が親子連れの来訪を喜ぶように、風でゆらりと葉を揺らしている。
 外の様子も一望できる素晴らしい席に案内され、子供は先程の大声による驚きも忘れてはしゃいでいた。

 そんな子供の様子を微笑ましくも眺めていたが、父親の方がメニューを片手にパラパラと品定めをしている。
 このお店は昼は喫茶店。なので、子供でも安心して食べられるようなメニューをいくつか探していた。

「ええと、じゃあ今注文しても大丈夫かな?」
「あ、はい。お伺いします」
「じゃあ、まずはー……」

 両親からいくつかの品を聞いて、伝票に書き込むモカ。間違いがないように注文の内容を復唱しつつ、自分がミスしないように字を書き連ねてゆく。
 そんな彼女の様子に子供は窓の外を楽しみながら、ちらちらと何をしているのかと視線を移したりしていた。
 視線に気づいたモカは子供が興味を持ってくれていると気づき、小さくウィンクをして子供に向けて一言。

「今からとびっきり美味しいご飯を作ってきてあげるから、期待して待っててね?」
「っ、ホント!?」
「だから、お父さんとお母さんの言うことを聞いて待っていられるかな?」
「うん!」

 子供はモカと約束! というように手を差し出して、指切りの構えをする。それに合わせてモカも小指を突き立てて、子供と指切りして約束をした。

 親子が頼んだのは子供用のオムライスと、親たちが食べるナポリタン。
 子供用のオムライスは少し甘めのケチャップを使用して、親が食べるナポリタンは大人の味なケチャップを使用して、それぞれ味の違いを際立たせた。

「おいしいね、お母さん!」
「うん、ホントねぇ。また来ても良さそう」
「お父さん、また来てもいい?」
「ああ、もちろん。皆でまた来ような!」

 美味しそうに食べる親子は瞬く間に食事を終えて、席を立ってお支払い。
 食べ終えた親子の会話に、モカは一言だけ彼らに添えた。

「ありがとうございました! またのお越しを!」
"Stella Bianca"の夜。或いは、海賊と店主…。
●波の音が聞こえている
 カラン、と氷の揺れる音。
 ふぅ、と熱い吐息を零し細身の女性が視線を窓の外へと向ける。
 暗い夜、海の彼方に丸い月。
「いい夜ね。でも、きっと明日は嵐になるわ」
 そう呟いて、女はグラスを空にした。
 頭に巻いたターバンに、視線を隠す丸サングラス。
 潮風の香りを纏った女だ。
 身につけた高価な装飾品と、リラックスした様子ながらも油断を見せない立ち振る舞い。
 彼女は海洋でも名の知れた海賊である。
「……嵐? こんなに風も穏やかなのに?」
 空のグラスに酒を注いで、モカ・ビアンキーニはそう問うた。
 モカ・ビアンキーニは彼女の素性を知っているが、そのことを言及するつもりは無い。静かに酒を飲んで、少しだけ言葉を交わして、それで満足して帰っていくのなら、彼女はただの客なのだから。
 もちろん、この店で揉め事を起こすのであれば、容赦はしないつもりではある。
 幸いなことに、今夜の客は彼女1人だ。
 多少、荒っぽくなっても、誰も迷惑はしないだろう。
 もっとも、彼女の方も別に争いに来たわけではないようなので、そのような心配はきっと杞憂に終わるだろうが。
「嵐の前の静けさっていうでしょう? 海の上で長く過ごすと、なんとなく分かるようになるのよ」
 そう言って女海賊は、グラスの中身で唇と喉を湿らせる。
 唇に付いた酒精を、赤い舌でペロリと舐めた。
 艶めかしささえ感じる所作だ。
「いいお酒ね。マスターも飲んで。私の奢りだから」
「あぁ、では遠慮なく……酒に関しては、ちょっと伝手がありましてね。いいのを揃えるようにしているんです」
 わざわざ店を訪れた者に、安い酒を提供するのは気が引ける。
 そういった理由によるものか、バーカウンターの棚に並んだ酒のボトルは、どれも上等なものばかりだ。その割に、1杯の値段は決して高すぎると言うことは無い。
「次はこちらを試してみませんか? “真っ赤な薔薇”というワインです」
「そう……では、いただこうかしら。なぜ“真っ赤な薔薇”と?」
「ある女性の唇の色に似ているからだとか」
 艶やかな、血の色にも似た紅いワインをグラスに注ぐ。
 芳醇な香りに瞳を細め、女性はうっとりと瞳を細めた。
「いい香り。その名前を付けた男は、きっとかなりのロマンチストね」
「えぇ、きっと。男には男の世界があるんでしょう。或いは、美学と言ってもいいかもしれませんが……どちらにせよ、気障ですね」
 くすりと笑って、モカと女は視線を交わす。
「ボトルのキープはできるかしら?」
「えぇ、もちろん。名前はなんと?」
 キープの札を手に取って、モカは女にそう問うた。
 壁にかかった手配書へと目を向けて、女は答える。
「マリブと、そう書いておいて」
執筆:病み月
シンデレラは夢を見る。
「いらっしゃいませ。ご注文はお決まりですか?」
「……赤ワイン。うんと強いやつ」
 どうしたものだろうか、とモカは考えた。
 時刻はバータイム。青白い月が弱く光を湛えていた。
 "Stella Bianca"を訪れた客の女は赤いドレスに身を包み、煌めくアイシャドウが良く似合っている。
 ああ、誤魔化せているつもりだろうか? だが、イレギュラーズとして経験を積んできたモカに見抜けぬはずもない。
「申し訳ありません。当店では未成年のお客様にお酒を提供することはできません。ノンアルコールでしたらお出ししますが」
 女は赤い、それこそワインのような瞳を大きくさせた。
 どうしてバレたのかと言いたげに唇をわななかせれば、その視線は下を向く。
 それはどこか落胆したようでもあり、諦めているようでもあった。
「なら、軽く食事を。スモークチーズが欲しいわ」
 そう告げた女、いや少女の前のカウンターにモカはチーズの盛り合わせを置いて、女性にしては低いその声をかけた。
「お酒は二十歳になってから。その時は、店でとびっきりのをお出ししますよ」
 
 スモークチーズをひとかけら。少女が口に運んでからまた口を開くまでの時間は嫌に長く感じた。
 彼女は縋るような瞳でモカを見つめる。
「私、やっぱりまだこどもなのかしら」
「18になって、それでも世間から見ればまだこども?」
「こどもだから、愛されることすらも許されないの?」
 わななく唇から洩れた、嗚咽のような言葉。
 縋りたい、救われたい。苦しいから、悲しいから。
 ワインを飲んで、自らを大人なのだと思い込みたいほどに、ほしいものがあった。

 モカは無言でシェイカーを手に取れば、オレンジジュースとレモンジュース、それからパインジュースを注ぎ入れる。
 シャカシャカと、シェイクする音だけがバーに響く。
 無言の時間は少女には耐えがたかったのか、俯いたその視線の先にモカはグラスを置いた。
「大人か子供かなど、過ごした歳月の差でしかなく、子供が大人に憧れるのも自然なことだろう」
「だが、君が君であることには変わりない」
 だから、と言葉を継いでグラスにドリンクを注ぎ入れた。
 例えほしいものが今すぐ手にはいらなくても。
 そのせいで自分の年齢を呪うことがあっても。
 でも、今の少女の時間も過ぎ去っては戻らないものだから。
「ゆっくり大人になればいい。シンデレラ」

 『シンデレラ』は夢を見る。
 麗しく赤い雫ではないけれど、夢見る少女に贈られた美しいモクテルに涙が落ちた。
執筆:凍雨
凍える夜にはビターな肴を
 その晩は、凍えるような寒さと静寂が支配していた。
 その寒さが災いし、バーが開店してから数刻が過ぎたが、未だ1人の客も訪れない。
「今日はこのまま店仕舞いかな……」
 モカが呟いた直後、チリンチリンと音を立て、1人の男が来店する。
 男は分厚いコートを羽織り、腰に銃を提げている。片目には眼帯を付けていた。
「いらっしゃいませ!」
 男はモカの挨拶に会釈して返すと、カウンター席に座る。
「強い奴をくれ。こだわりは無い。強ければ何でもいい」
「かしこまりました」
 男は、とても寡黙な客であった。差し出したグラスを黙って受け取ると、静かに仰ぐ。
 目を閉じ、まるで石像の様に身じろぎもせず。ただその動作を繰り返す。
 風が強まり、ガタガタと窓ガラスが揺れる。静寂に包まれた店内では、やけにその音がうるさく聞こえた。
「なあ、アンタ」
「なんでしょうか」
 唐突に男が話しかけてきたのでモカは僅かに驚いた。だがそんな事はおくびにも出さない。
「アンタ、人を殺した事はあるか?」
「それはまた……唐突な質問ですね。どうしてそんな事を?」
「俺はこれまで何人も殺してきた。この銃で。傭兵だからな。で、ふと思ったんだ。俺以外の人間は、どういう気持ちで人を殺してるんだろうってな」
「なるほど……でも、今の私は唯のバーテンダーです」
「そうか」
 男は再び沈黙する。モカはこの話題を続ける事を一瞬躊躇ったが、こんな寒い晩で、他に客は誰もいない。そして目の前の客はこの話題を続けたがっている様に見える。
「…………そういう質問をされるという事は、あなたは人を殺す事に何か特別な思いを?」
「いや、逆だ。何も感じない。誰の頭を撃ちぬこうが、別に俺が傷つく訳じゃない。誰かの為に飯を作るのも、上司に媚びながら書類仕事をこなすのも、人を殺すのも。全部唯の仕事だ。だが、この考えは一般的では無いと最近気づいてな」
「ふむ……ですが、あまり気にする必要もないのでは? 少なくとも殺される相手は、あなたがどんな感情を持って引き金を引くかを重要視しないでしょう」
「はは、言えてるな……中々言うじゃないか、バーテンダーさん」
「そうでしょうか?」
 男は応えず、静かにグラスを傾ける。
「唯のバーテンダーである私には、お客様の最初の問いに答えられませんが……お客様の話を聞く事と、お酒を提供する事は出来ます。お代わりはいかがですか? ミスター……」
「グレイスだ。傭兵のグレイス。お代わりは頂こう。長い夜になりそうだからな、次はフルーティで軽めの奴を頼む。あんたも飲みな。俺のおごりだ」
「ええ、もちろん。かしこまりました」
 凍える夜に、2人はビターな会話を肴に、静かにグラスを傾けるのだった。
執筆:のらむ
巷で評判の女主人


 ──チリンチリーン。
「いらっしゃいませ」
 丁寧な口調でそう一礼をするのはモカ・ビアンキーニ(p3p007999)。彼女が経営する昼間は軽食喫茶 兼 夜はバーのStella Biancaへ今日も客人が舞い込んだ。
「ほぉ……アンタが評判の女主人ってヤツかい?」
 店に入って来て早々の言葉にモカは目を見開いたが、彼女は冷静に。
「評判かはさて置いて、ここStella Biancaの店主は確かに私で当っている」
「巷では噂になってるぜ? この国には飯も飲みもんもお墨付きの美人な特異運命座標サマが経営する喫茶店があるってな?」
 巷での評価を偶然であってもこうして聞ける機会があるのは、経営する者としては有難い事である。
「そのような話題が出るのは嬉しい事だ。
 ……さて立ち話もなんだ、カウンターにでもどうだろう?」
「だな、美人な上に気も利く……いいマスターだ」
「大した事では無い。ご注文をお伺いしても?」
 とにかく褒めてくる男性客はうーんと暫く悩んだ末。
「この店は初めてだからなァ……アレだ。アンタのオススメってヤツは要望してもへーきなヤツかい?」
「私のオススメ、か……」
「まぁ丸投げってのもカワイソーかね? んなら俺の今の状況を教えよう。
 俺は今小腹が空いていてね。けれど鉄帝帰りでちぃと暖かいものを希望したいってとこよ」
「なるほど……では少々待っていてくれ」
 男性客からのヒントにモカは手際良く作業を始める。小腹が空いていると言う表現をすると言う事はガッツリ系ではなく軽食を望んでいる。
 そしてダイレクトに暖かい食事を希望している。
 となると。

 ──
 ────
「お待たせ致しました」
「おや、随分早いね」
「お客様のヒントとして『小腹が空いている』と言う観点からガッツリ系ではなく軽食をお望みかと思い喫茶店の定番であるサンドイッチを提案しよう」
「ふむ? だが男客の小腹なんて女よりは入るぜ?」
 ニヤリと笑う男性客にモカはフッと微笑む。
「だろうな。と思った。なので肉よりは重くなり過ぎないエビカツを挟んだサンドイッチにしてみた訳だ」
「ほぉ?」
 男性客は感心したようにサンドイッチを覗き込めば、確かにサンドされているのはエビカツのようだ。
「そしてそのお供とするのはジンジャーティー。
 あなたの暖かいものとのご希望に答えてみた次第だがどうだろう?」
「なるほど。生姜は身体を温めるには最適なしろもんだ」
 男性客はジンジャーティーを一口飲めばホッとした表情になる。
「いやね、噂だからどんな女かと思ったが気に入ったぜ」
「ありがとうございます」
 これはまた一人常連が増えた瞬間である。
執筆:月熾

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