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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

今日のフリック(フリック観察日記)

関連キャラクター:フリークライ

奇想天外。或いは、生きた化石と呼ばれるそれを…。
●奇想天外
 それは奇妙な植物だった。
 中央にある種子部分……甘い蜜を分泌する球果から、大きな葉が2枚……1対だけ生えている。
 フリークライの広い背中に、それが根を張ったのは数ヵ月ほど前だっただろうか。ゆっくり、少しずつ、けれど確実にそれは2枚の葉を伸ばし続けた。
 今ではフリークライの背丈を超えて、引き摺るほどに伸びている。
 それでも、葉は伸び続けた。
 成長の限界など無いかのように……否、実際に成長の限界は無いのだろう。コルク質の茎から伸びた葉は、例えば風に引き裂かれようと、地面に引き摺られて擦り切れようと、一切の成長を止めることは無いのだから。
 ウェルウィッチアと呼ばれるその植物は、全く持って奇妙な生態を有している。フリークライの知識に基づいて判断するなら、それは裸子植物で間違いない。
 けれど、葉の性質などは被子植物のそれにも近い。
 はじめのころ、まだ小さかったそれがウェルウィッチアであるとフリークライは気づかなかった。ある程度、成長して植物としての特徴を詳細に確認できるようになってはじめて、その正体に思い至ったのである。
 ウェルウィッチアは“奇想天外”の別名で呼ばれる植物だ。
 きっと、どこかで蟲か風に運ばれた種がフリークライの背に付着して根を張ったのだろう。
 きっと、フリックの背に根付いたウェルウィッチアもいずれは種子を実らせ、子孫を残すためにそれを風へと託すことになる。
 そうして命は巡るのだ。
 と、しかし……そこでふとフリックは思い至った。
 ウェルウィッチアは非常に……桁違いともいえるほどに長い寿命を持つ植物では無かっただろうか。
 1000年を超えている個体も多く、中には2000年以上生きている個体もあるらしい。
 フリークライの背に根付いた個体は、そんな長寿のウェルウィッチアの中では新芽のようなものである。
「フリック……マモルヨ」
 永久ともいえる時を稼動するフリークライにとって、長い付き合いになるかもしれない植物だ。
 そしてきっと、いつかフリークライが機能を停止したとしても、ウェルウィッチアは生き続けられるかもしれない。
 長く伸びた葉に触れて、フリークライは歩き始める。
 陽の当たる場所を目指して。
 そんな彼の周りには、いつの間にかリスや鼠といった森の小動物が続々と集まって来ていた。
 小さなリスがウェルウィッチアの葉に寄った。
 奇妙なほどに長い葉が珍しいのか。
 甘い蜜の香りに惹き寄せられたのか。
 リスを驚かせないように気をつけながら……暖かな場所へ、ゆっくりと歩を進めて行った。
執筆:病み月

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