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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

今日のフリック(フリック観察日記)

関連キャラクター:フリークライ

ふわふわ事件
 ある日、フリークライが、ふわふわになっていた。
「まあ、ミントやシソが増えたんじゃないからまだいいけど……どこで拾ってきたのよ」
「サア」
 元々フリークライには草や苔が生えていた。が、それに加えてふわふわの黄金色をした『何か』達がゆらゆらうごめきメーメーとないているのだから、小さな牧場のような有様だ。
 『何か』はレンゲの方を向き、丸い緑の瞳で、「メェ」とあいさつをする。それを見て、レンゲはとうとう大げさに天を仰いだ。
「なんでこんなに羊草がいるのよ! ご丁寧にメーメーメーメーないて、切りにくいったらありゃしないわっ」
 羊草。プランタ・タルタリカ・バロメッツ。羊の入った実をつける、神秘の植物。実を熟すまで放置すれば、生きた羊が中から現れる。そして、茎に繋がれたままあたりを本物の羊の如く食べ荒す……といった具合である。
 無論、周囲に食べる草が無くなれば、飢えて羊は枯れる。なお味は甲殻類に似ている模様。
「話に効いたのと比べて随分小型だけど、このままじゃアンタまるっとハゲ山よ? 近所の村で刈り取ってもらって頂戴。羊毛と肉のようなものが手に入るんだから、向こうだってタダでやるわよ」
 自身の特等席を奪われかけているレンゲはフリークライを急がせようとするが、当の宿主は、
「デモ、羊、可哀ソウ」
 この一言である。生まれたばかりのバロメッツ達は、食欲旺盛にフリークライの体に生えた緑を食み、機嫌よさそうにないている。
 
 と、そこに、
「待ってください、刈らないでくださいっ!」
 大量の鉢を担いだ少年がやってくる。背はひょろ高く、真面目そうな顔立ちは息切れのせいか苦しそうだった。
「何よアンタ」
「師匠が逃がしたバロメッツを捕まえに来た者ですっ……ああっ、あんなてっぺんに。登れるかな……」
「バロメッツ、逃ゲタ?」
 ぴょんぴょんとフリークライの背の上に手を伸ばそうとする少年であったが、やがて無理だと察したのかその場にへたり込む。
「はい、正確には、バロメッツの綿毛が、ですが」
 話を聞けば、少年の師匠は植物魔法に長けた魔女であるらしい。
 観賞用に小さく品種改良したバロメッツ達を鉢に入れ、手押し車に乗せて森の広場に連れて行ったところ――ふいに突風が吹く。
 そして、ちょうど種をつけていた一匹のバロメッツから綿毛が飛び立っていったのだという。
「その後は飛んだ綿毛の行方を二人で調べ続けました――風を読み、占術を何度も行い、精霊達の話も聞き……」
「ココ、来タ」
「ですっ」
 メエ。
 弟子を見て、バロメッツがのどかになく。

「結局この子達、どうするつもり?」
「鉢に入れて、師匠のところに持って帰ります。帰りは転移の呪文があるので大丈夫ですけど……掘り起こすの大変だなぁ」
「二人、バロメッツ、食ベル?」
 フリークライの腕を伝いながら、何とか頭上へ移動した弟子。小型の鉢にバロメッツを丁寧に植え直せば、メエ、メエと他のバロメッツ達が問うようになく。
「そんなことはしません。師匠は自分の髪の毛より羊達を大事にしています。毛刈りをすることはありますが、毎朝若草を生やしては食べさせ、肥料もあげ、放牧してますし」
「そして、うっかり綿毛を逃がしてフリックの頭に羊が生える、と。全くいい迷惑ね」
「すみませんって……というかいつもより毛並みすごっ! どんな魔法を使えばこんなに栄養状態のいいバロメッツが生えるんですか!?」
 やがて日が暮れる頃、バロメッツを回収し終えた弟子は、一礼をして呪文を唱え、去っていった。
 ご迷惑をかけたお詫びに、と残されたのは、良質な金色の毛糸玉三つ。
執筆:蔭沢 菫

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