幕間
饗宴会議
饗宴会議
関連キャラクター:マルベート・トゥールーズ
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- 魔狼たちの夜
- 赫き月。輝きし此の夜に。
貪欲なる獣の悪魔マルベート・トゥールーズは、雲ひとつとして存在しない空の下飽くなき愛を囁く姫を。今宵も餌食となる獲物を求めていた。
どれほど、悍ましき光景が目の当たりにされるか、それは月明かりでさえも照らし出す事が出来ない程の闇。
そして、その眷属たち。
獣の悪魔マルベート・トゥールーズが眷属、「饗宴の群れ」に属する悪魔の狼達が、悲鳴が聴こえて来るのを、今か今かと待ち遠しくも騒ぎ立てていた。
【チキチキ! 第壱回! 誰が一番美味そうなイレギュラーズか?! 大討論会 in 生生生生夜明けまでから騒ぎ!】
「サァ! テメェラ! オッパジメんゾ!」
ガオオオオォオォオォッー!
バウ! バウ! バウ!
にゃわわわわ!
ワォーン!!
はじまりよるデ! しかしッ!
この会の主な目的は、イレギュラーズの名前と部位が書かれている無限面体サイコロを2つを振り、どんな料理すればどのイレギュラーズが美味そうになるのかを話す趣向だ。
一以降、会話は日本語、デーモン語混じりの翻訳でお楽しみください。
「ヨシ、会規モ述ベタ所デ、サァ! ダレガハジメにサイコロヲ振るのダ?」
……ザワワ、……ザワワ、ザワザワァー
辺りが、静まりかえる。と、
「セやったらワイがサイショにフリまひょか?」
魔狼の一匹がヒョイとサイコロを振った。
カハカラコラコラ〜。
サイコロの出目は……。[アーリア]部位は[自由]サイコロに選ばれた結果が投影機によって獲物候補の姿形とプロフィールが映し出される。
【アーリア・スピリッツ(p3p004400)】
大体、酒を飲んで酔っている。
肉付きのいい体。桃色髪の女。
「サァ! ハッタハッタ! ドノヨウニ料理スレバ、コノ女ガ美味ク成ルカ、話ソウデハナイカ!」
……ザワワ、……ザワザワァー
「ホナ、ワイから話シましょか、ソヤナァー、お好み焼きなんかエエんとちゃいまっカ。このオネエちゃんのバラ肉なら酒の旨味もヨォーク染みてて、キンキンに冷エタ、冷麦酒とも合うと思うデ、しかし!」
「ガルルルルル、ウォレ、アタマカラマルカジリ、ソノママ全部、丸焼キニシテ、喰ウ!」
「ワウ! ショウセイハ骨付き肉がよいデスゾ! 肩肉をスペアリブにするのがヨイデスゾ!」
「ワォーン! ナンデモオイシクいただきマスデアリマス!」
「にゃわわ! ボキはオナカノタタキをサシミで食べたいデスニャン! ウマウマデスニャン!」
魔狼たちの夜は深まる。
※この討論会は獣の悪魔マルベート・トゥールーズ様が眷属、「饗宴の群れ」に属する我々悪魔の狼達の複数で結成された、「トゥールーズ魔狼會(略してトゥーマロ)」によって企画、運営されし崇高なる討論会である。 - 執筆:アル†カナ
- シラスの脳
- マルベート領、黒睡蓮の湖。
太陽はとっくに沈んで赤い月が登り、蝙蝠が踊る魔の時間。美しい黒い睡蓮が水面に揺れ、る湖にてマルベートと眷属達が一堂に会していた。
「じゃあ、今日も始めようか」
手を叩いてマルベートが切り出した。
なんてことない悪魔達の暇潰し。
イレギュラーズ達の中で誰が一番美味しそうか?
それを各々好き放題言い合うのだ。
冒涜的で悪魔的な楽しい時間である。
やいのやいのと賑やかで悍ましい単語が飛び交う中で次のイレギュラーズの名前が上がる。
「あのシラスという少年はどうだ」
――シラス。
数あるイレギュラーズの中でもトップ層に数えられ、ローレットの信頼も厚い少年だ。また闘技大会でも数々の優秀な成績を収めており、戦闘に於いての知識もかなりのものだった。
ブランドとしては最高級のランクだろう。
だがしかし、と別の眷属が異議を唱える。
「あの少年。あまり肉はついていない」
それにまた別の眷属が同調した。
「そうだな、過食部は少ないのではないか」
彼らの言葉にふむ、とマルベートは考える。
シラスは細身である。
すらりと伸びた手脚は少年から大人になりかけている段階で美しいシルエットではあるが、食に適しているかといえば答えはNOだ。骨を丁寧に取り除いたところで僅かに得られる肉も筋肉質で硬そうだ。それはそれで、調理のしがいもあるだろうが今回は別方向からアプローチを仕掛けてみよう。
マルベートは人差し指を立てた。
「彼の脳はどうかな?」
「脳?」
眷属が聞き返し、マルベートは頷く。
シラスは頭の回転が非常に速い。
数え切れないほどの修羅場を潜り抜け、ソレはさらに磨きを掛けている。窮地に追い込まれた時も、強敵を言いくるめる時も、追っ手を巻く時も。フルスピードで稼働するスーパーコンピュータの様にその脳は幾度となく主人を助けて来た。
「調理方法はそうだね、素材本来の味を大事にしたいから……さっと茹でた後に塩をかけてシンプルに頂いてもいい。ああ、でも洋風にトマトソースでじっくり煮込んでもきっと美味しいよ」
直感、知識、経験。
それから、思い出――。
それらがうんと詰まって、沢山の皺が刻まれた脳はきっとトロトロで舌の上で溶けて、解けて、融けてあっという間に無くなってしまうんだろう。
お酒はきっとなんでも合うけれど、彼の脳を頂けるのであれば、大事に取ってあるお気に入りのビンテージワインをあけるのもやぶさかではない。
その味と舌触りを想像しただけで、興奮でぶるりと身体が震えた。
「ああ、楽しみだな。愉しみだなぁ!」
天使の様な可愛らしい笑顔を見せるマルベートはまさに悪魔だった。 - 執筆:白
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