幕間
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地上と微睡みの狭間で
地上と微睡みの狭間で
関連キャラクター:トスト・クェント
- 転じた者が眠る澱み
- ……。
あぁ、煩いなぁ。
どうしてみんなそんなに争うだろう。
争って、その先に何があるっていうんだろう。
地上はどこも争いの音が絶えない。
だからおれは、水の中にいる方が安らげるんだ。
だって、地上では誰もおれを必要としないから。
ここなら、誰もいない。求められることもないけれど、傷つくこともない。
……でも、ここはどこだろう。なんだか、水にしては暖かくて。赤黒くて。少し肌にまとわりつくようなこの感じ。
不思議と、“今のおれ”には、不快感もなく。
あぁそうだ。おれにはギフトがあったんだった。どうして忘れていたんだろう。
思い出したら途端、視界の澱みが取れていく。
赤いそれは、うっすらと見通せるようになり。
周囲に沈んでいたのは、たくさんの同族“だったモノ”たちで。
でもなぜだろう。それを見ても、おれはなにも感じなくて。
適当に、沈むひとつを手に取って。その、色を失った瞳を覗き込んでみる。
あぁ。そうだった。
食べたのは、おれだった。
そこに映るがらんどうの瞳と骨と皮だけの身体を見ても、心は凪いでいた。 - 執筆:ユキ