幕間
ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。
【幕間劇】
【幕間劇】
虚構と現実の間で生きる哀れで愚かな生命の話。
------ It was written in the stars. (そういう運命だったのさ)
関連キャラクター:Tricky・Stars
- Absolute Killer
- ●Terrible actor
【-/-/- まぶしい】
誰もが讃える美しさ。当然のこと。
誰もが震える演技力。当然のこと。
――誰もが目を瞑る性格と、誰もが諦める癖。
噫、それさえ無ければきみは最高の『番狂わせ』になれたのに!
「うるさいな、誰だよ」
虚の声が耳に痛い。心臓に針を刺されたような気分だ。それなのに目が覚めない、じゃあこれは現実? ふざけないでくれ、誰が性格が悪いって? 虚、お前悪口言われてるみたいだよ。反論はないのか。
「ない。それに、悪口を言われてるのは俺じゃなくて稔だぜ」
なんだそれ、冗談も大概にしてくれ。俺は美しい、俺は素晴らしい作家、俺は誰もが認める役者で、俺は――……俺は。俺は。俺は!!
「そうやってまた都合の悪いことから逃げるんだな」
嗚呼、噫、ああああ!! uuuuuugh!! 違うんだ、これはそう。日記だ。俺は、記録をしているんだ。見た夢を記録するだけの、詰まらない日課。怒りも疚しさも悔恨も必要ない。クソクソクソ、五月蠅いな。誰だ、話かけるな。俺は今、虚と喋っているんだ!!
「日記を書いているんだろ? 俺は喋ってない。稔、誰と話してる?」
――あの子が死んだ。
――あの子が死んだ!
――やっと死んだ。
――簡単に死んだ。
――もっと早く、殺しておけばよかった。
――もっと甚振って、殺せばよかった。
どうしてそんなひどいことを。俺が、アイツが、何をしたっていうんだ。
待て。『アイツ』って、誰。虚、知ってるか?
「知らない、とは言わない」
「つまり」
「知ってる。でも教えない」
「どうして」
「これは夢日記だからさ、稔。なぁ、お前の日記はいつから小説になったんだ? 会話が続くと見苦しいと、作家なら知っているだろう。可読性を重視しないと、読み返す時に苦労する」
それはそう。俺は偉大な劇作家。世界中の誰もが賞賛し、憧れの的なんだ。その俺が、誰かも知らない『アイツ』とやらを気に掛ける必要は――。
『うそつき』
『嘘吐き』
『最後まで突き通せない嘘なら、最初から期待させるなよ』
『おまえのせいだ』
『お前の所為だ!!』
――夢なのに、妙にうすら寒かった。窓を開け放したまま寝て、雨でも吹き込んだか。脳裏に焼き付いた真っ赤な風景が美しい。誰よりも、俺よりも、美しい。どうして涙が出る。止まらない、助けてくれ、虚。俺は壊れてしまったのだろうか? 糸の切れた操り人形よりも惨めな、瓦落多になってしまったのか。
「いいや、稔。お前はまだ我楽多だよ。誰かを楽しませることが出来るはずだ」
燃え盛る風景から手が伸びる。それは俺と同じ顔をしていた。そいつが優しく、うっとりと囁く。
『この大根役者。死んで出直せ』
……殺したい程にむかつく奴だ。俺の麗しく傷ひとつない美貌で、汚い言葉を吐くな!! - 執筆:まなづる牡丹