PandoraPartyProject

幕間

【幕間劇】

虚構と現実の間で生きる哀れで愚かな生命の話。

------ It was written in the stars. (そういう運命だったのさ)


関連キャラクター:Tricky・Stars

A sweet dream.
 ――断片的なことば。

●-/-
 甘く菓子で出来た家
 たくさんの人々が住んでいた

 飢えているけれども、それでも営みがあり幸せだ っ た はずだ
 断定するには早い

 赤子がうまれたとしらせがきた
 よろこびをたたえるはずだった

 裏切り者 怪物の笑顔
 怪物はすべてを壊すわけではなく、ただ俺を追いかけた

 にげて、にげて、にげて
 汗をかいて
 ころんだりもした(夢は残酷だ、走れども走れども、苦しみの波はとまらない)

 怪物は 鬼は
 人の、身体のようなものを、つぶして、それから(――黒く塗り潰されている)

 ……失わなければいけなかった。

 烏は亡骸を食らい笑う
 手を伸ばして抗って
 やめろと懇願したとて
 下卑た声で鳴きわらうのだ

「ならば代わりを差し出せ」

 右目を一舐め、黒い嘴
 生きたまま人の肉を食らうかいぶつ

 虚が烏の奥で、笑っていた
執筆:
Sleepy Hollow
●Phantom

【-/-/- 雨のち曇り】
 仕事をした。簡単で単調で眠くなる仕事だった。
 並んだ生首を数えるだけの仕事は二度としたくない。
 ひょっとしたら本当に寝ていて夢の可能性もある。

 生首はどれも表情豊かだった。
 満面の笑み、泣きっ面、怒り、真顔、眠そう……少し苛つく小馬鹿にしたような表情のヤツもいた。
 数えているうちに連打して数え間違いがあったかもしれないが仕方ない。そのくらい単調なんだ。

 それで、そう、仕事をしたから報酬を[貰った](二重線で消され、『貰うはずだった。』に訂正されている)
 新鮮な生首をくれるというから、一番気に入ったものを選んだ。
 鼻と唇が削がれ、本来目のあるところは落ち窪み、焼け爛れて引きつり所々壊死した皮膚で覆われた、醜悪な生首。
 のっぺらぼうより余程酷い生首に愛着が湧いて――受け取ろうとしたら、手が滑って落としてしまった。
 地面に叩きつけられた生首は先程まであんなに活き活きとしていたのに、陶器の如くひび割れて壊れた。

 割れた生首の中から一枚の手紙が出てきたので読んでみる。

『偉大なる劇作家様へ。お前に誰かの心は動かせない、普通であることの真似ごとすら出来ないお前には!』

 最後まで醜悪な首だ。生意気な手紙を散り散りに破いて帰る。

 俺は、俺は、俺は。

「噫ファントム! ゴーストとどちらがマシだ? この俺に教えてくれないか」

 生首を数えていたカウンターはとっくに上限だったけど怒られなかったので良しとする。
 次の仕事は耳を数える仕事らしい。腕が疲れそうだと思った。
What is the true?
●-/- cloudy→clear

 首吊りピエロがゆらりとないた
 さかさまのよる
 それはふりそそぐあめのようにとうぜんに
 怯える人のおもかげ

 にげなくてはいけない

 かえるよすがもない

 ただきけんにさらされるだけのこのて
 あの日の笑顔は嘘だったようだ
 わらうことすらもゆるされない
 ならばやさしさなんてなければよかったのに

 ■■■■■■■■■■■■■■■■

 ■■■■■■

 ■■■■った

(大きくこぼれたインクの痕がある)

 
執筆:
10 count
●These beauteous forms.

【-/-/- A storm is rising.】
 一族郎党(親戚の親戚の親戚とか、会った事も無い奴が大勢居た!)
 公安警察局みたいなのを名乗ってた気がする――奴等に身柄を拘束され山奥に閉じ込められる夢を見た。

 何でも親父が一度ボタンを押す毎に『世界を10秒巻き戻す』事が出来るスマホアプリを開発していて、『8時間世界を巻き戻した』事が発覚した――とか何とか、そんな罪が云々彼云。
 全く以って息子の俺には珍粉漢粉な話だ。だってさ、彼の職人気質の――ってか、家は染物屋じゃなかったのかよ。
 其れに何時迄も古いガラケー使ってた親父がだぜ? 何でいきなりスマホアプリ。
 而も結構界隈じゃ名の知れた開発者なのだとか何とかで、夢の世界は良く判んね。
 一寸面白くて笑ったりもしたけど、臆、何だろ。自然と山奥での生活は悪くなかったな。
 
 なーんもねえ山奥で、でも原付で走れば(監視付きだったけど)割と都会って感じも無くは無くて、少し早い夏休みって感じで。
 従姉妹のねーちゃんの旦那の弟の婚約者のバツイチの女の人の5歳位の息子(??? 分かんないけどもう此処まで来たら只の赤の他人だと思う)とスイカを冷やしてるデカいプールで水遊びしたり、畑の野菜のもぎたてを食ったりなんかして。
 
 んで、結構可愛い女の子ナンパして、ショッピングセンターで監視を撒いたりして、まー田舎なんでやる事も殆ど無くて、山の見晴らしの良い丘の木陰でヤる事ヤッたりさ。(蚊にぼこぼこにされた。夢の筈なのに起きた今でも痒い気がする)

 今世界中の優秀なエンジニアを集めて『世界を3秒早送りする』アプリを必死こいて作ってるって云うから(そうとは云え、もう一度親父が戻したらしき『8時間前』まで戻さなきゃいけないってんだから大変そうだった。そうしないと歴史がどーのこーの)

 んで、親父を問い詰めても答えてくれないからさ、俺、公安の人に訊いた訳。具体的に何時、親父が『8時間』戻したのかって。
 そりゃ? 理由とか気に為るじゃん。
 そしたらさ、凡そ『12,931,200秒』前だと。
 1分が60秒で、1時間が3,600秒で、24時間がえーっと、86,400秒で。
 まあ、まあ俺の頭には『???』って浮かんでたんだろうな。『2月17日』って教えてくれたんだ。

 其処で眼が醒めた。

「フン、灼け死ぬ前まで時間を巻き戻したと云う事か。【虚】にしては良く出来た愚作(シナリオ)じゃないか」
「全く、夢の中でも親父って奴は。こんなお涙頂戴の話、腹の足しにもなりゃしないんだぜ」

 ……――本当、悪かったって思ってるよ。
執筆:しらね葵
Absolute Killer
●Terrible actor

【-/-/- まぶしい】
 誰もが讃える美しさ。当然のこと。
 誰もが震える演技力。当然のこと。
 ――誰もが目を瞑る性格と、誰もが諦める癖。

 噫、それさえ無ければきみは最高の『番狂わせ』になれたのに!

「うるさいな、誰だよ」
 虚の声が耳に痛い。心臓に針を刺されたような気分だ。それなのに目が覚めない、じゃあこれは現実? ふざけないでくれ、誰が性格が悪いって? 虚、お前悪口言われてるみたいだよ。反論はないのか。
「ない。それに、悪口を言われてるのは俺じゃなくて稔だぜ」
 なんだそれ、冗談も大概にしてくれ。俺は美しい、俺は素晴らしい作家、俺は誰もが認める役者で、俺は――……俺は。俺は。俺は!!
「そうやってまた都合の悪いことから逃げるんだな」
 嗚呼、噫、ああああ!! uuuuuugh!! 違うんだ、これはそう。日記だ。俺は、記録をしているんだ。見た夢を記録するだけの、詰まらない日課。怒りも疚しさも悔恨も必要ない。クソクソクソ、五月蠅いな。誰だ、話かけるな。俺は今、虚と喋っているんだ!!
「日記を書いているんだろ? 俺は喋ってない。稔、誰と話してる?」

 ――あの子が死んだ。
 ――あの子が死んだ!
 ――やっと死んだ。
 ――簡単に死んだ。
 ――もっと早く、殺しておけばよかった。
 ――もっと甚振って、殺せばよかった。

 どうしてそんなひどいことを。俺が、アイツが、何をしたっていうんだ。
 待て。『アイツ』って、誰。虚、知ってるか?
「知らない、とは言わない」
「つまり」
「知ってる。でも教えない」
「どうして」
「これは夢日記だからさ、稔。なぁ、お前の日記はいつから小説になったんだ? 会話が続くと見苦しいと、作家なら知っているだろう。可読性を重視しないと、読み返す時に苦労する」
 それはそう。俺は偉大な劇作家。世界中の誰もが賞賛し、憧れの的なんだ。その俺が、誰かも知らない『アイツ』とやらを気に掛ける必要は――。

『うそつき』
『嘘吐き』
『最後まで突き通せない嘘なら、最初から期待させるなよ』
『おまえのせいだ』
『お前の所為だ!!』

 ――夢なのに、妙にうすら寒かった。窓を開け放したまま寝て、雨でも吹き込んだか。脳裏に焼き付いた真っ赤な風景が美しい。誰よりも、俺よりも、美しい。どうして涙が出る。止まらない、助けてくれ、虚。俺は壊れてしまったのだろうか? 糸の切れた操り人形よりも惨めな、瓦落多になってしまったのか。
「いいや、稔。お前はまだ我楽多だよ。誰かを楽しませることが出来るはずだ」
 燃え盛る風景から手が伸びる。それは俺と同じ顔をしていた。そいつが優しく、うっとりと囁く。

『この大根役者。死んで出直せ』
 ……殺したい程にむかつく奴だ。俺の麗しく傷ひとつない美貌で、汚い言葉を吐くな!!

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