幕間
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怨めしき怪異譚
怨めしき怪異譚
関連キャラクター:鹿王院 ミコト
- ヒトミさん
- 「ヒトミさん、ヒトミさん、来てください」
私の学校には、七不思議のひとつとして「ヒトミさん」というモノがある。
学校の百葉箱にお供物をして「ヒトミさん」と呼ばれている女の霊を呼び出す、いわゆる降霊術だ。
ヒトミさんを呼び出すと、願いを叶えてもらえるという。
ただ、願いなら何でも叶えてくれるわけではない。
ヒトミさんを引き付けるものは、恨み、妬み、嫉み、と言われている。
まあつまりは、誰か嫌いな人がいて、そいつを呪いたいと思った時にヒトミさんを呼び出すのだ。
私が聞いた話だと、ヒトミさんを呼び出したのは、私の友だちの姉のその友だちで……まあ、要するに本当の噂かどうかは分からないほど曖昧な話なんだけど。
その人は、ヒトミさんを呼び出すために、百葉箱におまんじゅうを入れて、百葉箱の扉を閉じ、目をつぶってお祈りをした。
「ヒトミさん、ヒトミさん、来てください」
――けれど、誰かが来る気配はなかった。
「あーあ、やっぱり噂は噂でしか無いのか……」
その人はがっかりして、後ろを振り向くと。
ヒトミさんが立っていたそうだ。
なんでその女がヒトミさんだとわかったって?
ヒトミさんの特徴である、身体中に目がある化け物だったからだ。
「い、いやーっ!」
……その人がどうなったのかは、結局知らない。
なんでも、ヒトミさんは願いを叶えると、願った人間を取り込んで、身体の目の一部にしてしまうらしいけど。
人を呪わば穴二つ、ってね。
- 執筆:永久保セツナ