PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

怨めしき怪異譚

関連キャラクター:鹿王院 ミコト

『みてないよ』
 社会人三年目。パワハラセクハラサービス残業遣り甲斐搾取。新卒で入ってから昇給はたったの3千円。ボーナスは雀の涙ほど、有給は使えない雰囲気。そんな会社に退職届を出しても読まれもせず即ゴミ箱へ。帰っても何もする気が起きず、明日も仕事だと憂鬱な気分で眠て起きるを繰り返す日々。
 そんな時、ある噂を耳にした。どこで聞いたのかは覚えていないのに内容は耳に残っている。

 ――この辺に、出るらしいよ。子供の姿をした三つ目の化け物。
 ――その子の第三の眼と目があっちゃうとね、死んじゃうんだって。

 馬鹿馬鹿しい。今時小学生だってそんな噂信じないだろうに、いい歳した大人が何を言っているのか。嗚呼でも、死んじゃうのか。いいなぁ、それ。だってもう、こんな生活続けたくないし。どうせなら会いたいな、その三つ目のお化け。
 チカチカと点滅する街灯の下、いつも通り缶珈琲を買って帰る。ふと次の街灯の下、小柄な人間があちらを向いてぽつんと立っていた。長い髪、女子供が出歩く時間じゃないと心配になって声をかけようとしてふと思い出す。

 ――その子は恨めしい気持ちを持つ人の処に現れるんだって。
 ――憎らしい気持ちって聞いたよ。
 ――悔しい、悲しい、虚しい気持ちでもいいみたい。

 どうして今それを思い出したのか。しかし視線が吸い寄せられるように背を向けた子供の掌に向かう。ぎょろりと動くなにか。
「みっ、みてない! みてないよ!!」
 怖くなって逆方向に走る。あんなに死にたかったのに、死より恐ろしいものがこの世にあるなんて、噫!

 ――もし目があったら『みてないよ』って言えばいいんだよ。

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