PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

怨めしき怪異譚

関連キャラクター:鹿王院 ミコト

『みているよ』
「これ絶対ヤバイって!」
 女三人で姦しく、ましてやうら若きが集まれば、そこで流れるは噂話と相場が決まっている。
 恋愛、流行、自慢に愚痴に。これは数々の話の中のひとつとして挙がった、他人には些細で、当事者にとっては恐ろしい何かの話。

「タトゥーじゃない?」
「攻めた柄だわ~」
「違うって! 呪われそうだから投稿もできないしさぁ」
 娘たちは喫茶店で、差し出された携帯端末に映るものを改めて確認する。
 紫と朱を混ぜた美しい夕焼け空を、毎日通う学び舎の壁を横に据えて撮られた写真。宙には一等星が月と隣り合わせに輝いて、思わず写真に残しておきたくのも頷ける。但し、問題は其処ではない。
 学び舎の壁に、過ぎ去る通行人が写り込んでいた。そこそこ人通りのある道で、しかも時間帯としても通行人がいても何も不思議な点はないのだが……通行人そのものが、不思議な、恐ろしいなにかに見えると――写真を撮った彼女だけは語る。
「この人の腕に付いてるこれ目だよ目、眼球!! 怖すぎなんだけど。タトゥーならリアルすぎだし、どっちにしろヤバイ奴じゃない!?」
「ん~でも撮ってる時は気付かなかったんでしょ?」
「そっちよく見てなかった」
「じゃあ大丈夫っしょ」
「テキトーだなぁ。どうするの私が明日こんな感じで腕に目つけて学校来たら」
「ウケる」
「つけまとマスカラするわ」
 全く深刻に話を受け止めてくれない友人に溜息を零し、撮影者も改めて写真を見直す。

 ――腕に刻まれた眼球が恨めしそうに此方を見ている様に感じるのは、本当に気のせいだろうか?

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