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幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

蒼剣幕間

関連キャラクター:ドラマ・ゲツク

Giselle
●第一幕
「――今日は留守だったのね」
 執務室のドアを叩いた来訪者はドラマ・ゲツク(p3p000172)にとって見慣れない女性だった。
「ちょっと出て来る、そうです」
「……お留守番? 貴方はローレットの――」
「はい。特異運命座標で、そのようなものです」
「……少し見ない間に随分可愛らしい子が好みになったのね、あの人は」
 年の頃は三十過ぎ程だろうか――長い髪、眼鏡をかけた知的な美人で体型はスレンダーながらに出る所は出ている。
 実に端的かつ偏った表現をするならそれは恐らく『レオン君のタイプ』に分類される風情だろうか。
 ……だからと言う訳ではないのだが、ドラマの胸は少しざわついた。
「ええ。そうですね。可愛いからデートしようと言われましたし」
 ドラマが留守番を託されたのは行きがかり上の出来事である。
 叡智の捕食者はかしこいので決して彼の仕事を邪魔して部屋に入り浸っている訳ではない。
 叡智の捕食者はかしこいのでそんな事は決まりきった話である。
 彼の所用の間、執務室に残されて――珍しい客と出会ったのは偶然である。
(第一、レオン君が悪いのです)
 神聖なローレットの執務室を何だと思っているのか?
 逢引用とでも思っているのか? 馬鹿なのか? 死ぬのか???
 部屋のソファで膝枕をしたり、仕事をしている彼を眺めていたり、部屋の隅で本を読んでいたり。
 叡智の捕食者は賢いが、森林火災のメンバーは記憶力に難点があるのでドラマはそんな事実は棚上げている。
 唯、何とも――これは恐らく予感なのだろうが――ドラマは不思議な位に『彼女』の事が気になっていた。
「レオンが何時戻るか分かる?」
「いいえ」
 ドラマは少しだけ不親切な答えをした。
 確信がないのは確かだから完全な嘘ではない。
 唯、恐らく『そんなにかからない』が正解だが、素直にそれを言う気にはなれなかったのだ。
「そう」と頷いた女性はそんなドラマの内心を知ってか知らずか、「出直すわ」と踵を返しかけた。
 返しかけた所で――
「そうそう」
「……?」
 ――半身だけを振り向いてドラマの顔をじっと見る。
「『踊り疲れて倒れないようにね』」
「……っ……!」
 余計なお世話だ、と言いかけてドラマは何とか留まった。
 彼女は恐らくは『敵』で、恐らくは『唯の敵』では無いのだとそう思った――
執筆:YAMIDEITEI

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