PandoraPartyProject

幕間

野花

関連キャラクター:白薊 小夜

バイセンの彼女
「ああ、そういえば。バイセン、最近は随分この世界をエンジョイしてるようじゃないか」
「……最近? エンジョイ? 何をやぶからぼうに」
「君はほら、奇縁に恵まれているから。
 この間の仕事の時なんて、大変だったみたいじゃないか。
 長い黒髪のちょっと君に雰囲気の似た――そうだ、シラザミサヨだ。君の彼女の。
 手にかけそうになる位に盛り上がったんだろう?」
「……何ぞ前提が違う気がするのじゃが?」
「うん? 何か間違ったかな。彼女だろう?
 それとも何か? 君はあれが嫌いなのか?」
「面白がりよる」
「否定はしないね。さもありなんだ。『好み』ではあるだろうからね!
 いや、アレだけじゃないぞ。実際君はエンジョイしてるじゃないか。
 押しかけ女房の弟子君とか。最近だとわざわざ豊穣まで出向いてPVを撮ってきたと聞いたけど?」
「斬っても良いか?
 それにクリスチアン、それは呪言ぞ。
 言葉には言霊が宿るのじゃ。斯様なクソ幕間が何を生むか分からぬか?」
「旦那はん」
「ほらー」
「今の話、どういう事やの???」
「それはね、たては君。バイセンが女難の相だという話を……」
「梅泉、近くに来たから寄ってみたんだけど……
 あら、たてはちゃんも。この間は七味をありがとうね。
 ところで……取り込み中かしら?」
「ほらー……」
「私は天才だからね。勿論わざとやっている」
「やはり斬って良いか? 主???」
執筆:YAMIDEITEI
浮気性
●貴方は女怪と言うけれど
「……たまに理不尽な気がするわ」
 珍しく薄い唇を尖らせた白薊 小夜(p3p006668)に死牡丹・梅泉(p3n000087)は「うん?」と首を傾げた。
 屋敷の縁側で茶を啜る梅泉の傍に小夜はちょこんと正座をしていた。
 生家は武家なれば、きちんとした教養を施された彼女はとっておきの羊羹を二切れと抹茶を出し、彼はそれに満足している。
「やぶからぼうにどうしたのじゃ」
「……梅泉は私を散々女怪と言ったけれど、冷静に考えたら貴方の方が羅刹か何かではないの」
「ふぅむ。確かに」
「まぁ、そうでなかったらこんなに追いかけたくならないのだけど――」
 言うだけ言って頬を赤らめる小夜は概ね自爆しており、この場にsznが居たら大惨事は免れない所である。
 とは言え、似た者同士の二人は境遇も似ており、sznは買い物に行っているし、たてはは雪之丞(たてはがかり)に押し付けているから問題ない。
 もう一人の家人(フィーネ)は柱の影から微笑みと共に現場を覗く事はあっても騒がしくなる余地はないのだし。
「――こほん。兎に角、理不尽だわ。
 確かに私は女怪で多情なのかも知れないけど、梅泉だって羅刹で大事故発生装置じゃないの」
「……小夜?」
 怪訝そうな梅泉を小夜は「今日はこれでいいのよ」と受け流す。
「いい機会だから、梅泉。貴方のした事を整理するわよ」
「整理とは」

1、たてはちゃんの場合
「……うち、駄目だったやろか?」
「まだまだおぼこい。間合いも切れ味も子供じゃな」
「……………」
 気落ちしたたてはの頭に梅泉の片手が伸びた。
 頭を軽く撫で、黒絹のような髪を梳くようにした彼は離れ際に言った。
「十年の後に今一度。もっともわしはもっともっと――強くなるがな」

「十年の後に今一度じゃないでしょう。致命傷でしかないじゃないの!」
「小夜???」

2、サクラちゃんの場合
「わしはな。主が預かり知らぬ場で散る事を望まぬ。
 ……これも数奇で酔狂よなあ。死牡丹梅泉が桜を愛でて育む等とは」
「……っ……」
「強くなれよ、サクラ」
「そういうとこだよ……」
「……は?」
「……そういうとこなの!!!」

「普通に死ぬでしょう?」
「……今日の主は何か変ではないか?」

3、空観さんの場合
https://rev1.reversion.jp/scenario/ssdetail/2792

「論ずるに値しないとはこの事だわね」
「物凄く雑な事をされた気がするのじゃが……」
「ここまでを見ても『そういう所』なんだけど。
 この話には一番重要な核心が抜けているわ。分かるわね?」
「???」

4、私の場合
「……質問に質問で返すけど。
 ねぇ、梅泉。貴方はもし自分の獲物(おんな)を他所に取られそうになったらどうする?」
「当然、鏖じゃな。わしが死ぬならそれも一興、それまでよ」
「そういうところよ」

「……」
「……………」

 待ち侘びて
 一夜の夢の
 梅の花
 散り過ぐ刃鳴の
 色ぞをしえよ

「……小夜?」
「……………はぁ」

「……」
「……うん?」
「……………」
「……て。
 ……きれいにころしてね。わたしをわすれないでね」
「うむ、忘れぬな。主は良い女じゃった。名の通り綺麗な女じゃった。『小夜』」

「駄目じゃあ無いの……!」
「何事じゃ!?」
「全然駄目だわ……これは無理……!」
「だ、大丈夫か?」
「……こ、これは予想以上に反動が強い。まるで一菱の剣のよう」
「良く分からぬ状況に喩えられたのじゃが!」
「与太とは言え、これは危険な試みだったわ。
 封印しましょう――夜中の暇潰し程怖いものはないのだから」
 そう言う小夜の表情は僅かばかりに罰が悪く、僅かばかりに緩んでいてやっぱり見る人が見たら大惨事は確定だろうと思われた。

※与太なので本気にしないように!
執筆:YAMIDEITEI
通話してたら良かったのに
「……っ……」
「どうした? ああ――枝に掛けたか。
 案外そそっかしいな、主も。いや、主は視えぬのだ。
 これはわしの不作法じゃ。あいすまぬ」
「……平気よ、この位」
「戯け。見せてみよ」
「――!?」
「ふむ。生憎の出先じゃ。直ぐの手当とはゆかぬ所じゃ。
 主、ちと我慢をせい」
「!?」
「……嫌な顔をするな。ここは諦めてわしに任せよ。
 白磁の肌に傷が残り、毒の一つも回れば不本意の上塗りではないか」
「!? !? !?」
「……小夜、何を面白い顔をしておる」
「だから! そういう! 所なのよ!!!」

参照:https://rev1.reversion.jp/sketchbook/illust/946
執筆:YAMIDEITEI
暴動! たては軍!
※あらすじ
 死牡丹梅泉がヨアヒムのせいで行方不明になりました。

「――目に付くもん全て破壊や! デストロイ!」
(どうするのだ、この状況……)
「話は聞かせてもらったわ。私も同行する」
「呪いの日本人形!!!」
「誰が呪いの日本人形よ」
「くっ、不倶戴天やけど……」
「私の誕生日は6/19なの」
「え?」
「ろ く が つ じ ゅ う く に ち な の」
「……」
「……………」
「今日だけは認めたるわ。破壊やわ!」
「破壊だわ」
「正気に戻れ! 貴殿まで壊れてどうする!」
「――この憤慨の持って行き場が無いのよ。だからこれは正解なの」
「あああああああ……」
執筆:YAMIDEITEI
残響
●過日
「……あら」
 白薊 小夜(p3p006668)が自邸で全く予想外の人物の顔を出迎えたのはまさに青天の霹靂だった。
 驚いた雰囲気を纏った彼女の目の前には仏頂面をした紫乃宮 たては(p3n000190)の姿がある。
 小夜は厳密には見えていないから彼女の顔を確認した訳ではなかったが、見えないなりに見えるよりも鋭敏たるのが彼女であった。
「予想外のお客さんだわ。てっきり嫌われていると思っていたから――」
「嫌いです」
「……やっぱりそうなの?」
「嫌いです」
 小首を傾げた小夜にキッパリそう告げたたてははますます何とも言えない顔をしていた。
 応接間――広やかな座敷に座布団が二枚。時折、お茶を啜る音だけが響く空間はシュールでさえあった。
「……じゃあ、どうして? 尚更、こうして来てくれたというのは意外だわ」
「うちも沢山悩んだんやけど……」
「……」
「……………」
「……どうして?」
 二度促した小夜にたてはは「ああ!!!」と頭を抱えた。
 小夜からすればそれは可愛いすずなを思い出す所作である。
 いや、二人はビジュアルはそう似てはいないのだが――たてはの見た目はむしろ小夜に似ている――本質的な部分がそっくりである。
「たてはちゃん、落ち着いて、ね」
「……う、ぐぐ……この女、余裕見せはってからに……」
 小夜は自邸で客を迎え、普通に寛いでいるだけなのだからたてはの言葉は殆ど難癖だ。
 だが、そんなたてはの様子から――そして関係からも小夜は大体の用件は知れていた。
「……梅泉の事かしら」
「……………流石に気付かん程、鈍くはないやろな」
 あくまで大体であるから、細かい部分に推測のつく話ではないのだが。
「あの後、クリスチアンさんも色々調べてくれたと聞いているけれど」
 グラン・ギニョールの夜より此方、サリューは中々の騒がしさを迎えていた。
 手傷を負った当主のクリスチアンだが、彼は流石にしたたかで幾つかの手を打つ事で更にアーベントロートを『動き難くした』と聞いていた。
 事の次第や梅泉の事を小夜にわざわざ知らせてきた辺り、恐らくは多少の感謝と罪悪感を持っての事だろう。
 ならばたてはは尚更とも思われた。彼女はより詳しい事情を知っている筈であった。
「それで、何か分かったのかしら」
「何にも。クリスチアンはんでもお手上げや。うちは悔しうて、悔しうて……」
 言葉の端々に燃え滾るような憤怒が見え隠れしている。
 相当『暴れた』らしいとは聞いていた。何なら小夜は自分も一党に居た気がする――夢を視た気さえする。
「そう」
 それは兎も角。頷いた小夜がお茶を一口口に含んだ。
「……あんたは気になりませんの? 旦那はん、気にかけてたやないの」
「気にはなるわよ」
「ただ」と前置きした小夜はたてはに言う。
「『私は梅泉を信じているから』」
「――――」
「勝つと言ったのだから負けないでしょう?」
 小夜は『男の嘘』に良い思い出が無い。
 同時に『弱い男』にも良い思い出が無い。
 男の言葉を盲目に信じる愚かさも理解してはいる心算だ。
 だが、それでも――

 ――花濡れる
   快哉細き
   幕間の
   死出路の招き
   足蹴も涼し

 ――手弱女の細い快哉と侮られれば話は別だ。
(お望みの通り、信じていればいいのでしょう……?)
 これと見込んだ男の事を。貴方は、他の誰とも違うから――
「……はぁ、成る程」
 小夜の言葉にたてはの毒気が散っていた。
「『確かにあんたの事は大嫌いですけど、旦那はんの見る目はやっぱり風流なんやね』。
 小雪はんがお前が決めろとか……本来ならほかしてやりたいとこでしたけど。
 確かに『旦那はんが戻ってきたら』内助の功の一つ、正妻の余裕位見せとった方が惚れ直すやろからね」
「……?」
 不思議そうな顔をした小夜の前にたてはは懐から取り出した布包みを置いた。
「『間違ってもこないだの晩の礼とかやありませんからね』!」
「これは……?」
「言いたくありません。あんた、犬娘にでも聞いて精々絞られればいいんです」
 ぷい、と横を向いたたてはは「お茶、御馳走様」と席を立った。
 布包みを解いた小夜の手の中には薊の簪。
「……ああ」
 そう言えば、六月十九日は私の――
執筆:YAMIDEITEI

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