PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

『都市伝説“プリズム男”目撃談』

夜遅くまで遊んでいると、虹色の煌めきを見かけることがある。
逃げれば何も起きないけど、虹色に近づいてはいけないよ。
“プリズム男”が、やって来る――


関連キャラクター:アイザック

家出の少女
 少女は家出していた。帰るつもりもなかった。
 父はいない、母はいつもいつも怒ってばかり。だったら、外でいつも母に文句をつけられる『悪いお友達』と遊んでいるほうが気が楽で自由だったから。
 学校をさぼり、友達たちとつるんでゲームセンターを回り、買ったお菓子を路上で座り込んで食べ、夜になって咎めに来た警察を馬鹿にしながら逃げて。
 路地裏のいつものたまり場に戻ってきたときに、ソレはいた。

 きらきら輝く虹色。四角い大きなプリズムが浮いている。
 普段なら綺麗なはずのそれは、路地裏の暗さもあってとても不気味に見えた。

 プリズム男、と誰かが呟くのが聞こえる。呟きが聞こえたのだろうか、プリズムの頭がこちらを振り返ったように見え……次の瞬間大パニックになった。
 ――馬鹿! なんで声を出したんだ!
 ――見つかったらおしまいなんだろ、アイツは!
 ――逃げろ、捕まったら何されるかわからないんだぞ!
 悲鳴を上げて少女の友達たちが逃げ出す。一方で少女はたった一人、恐怖に負けて逃げることも叶わずにその場に座り込んでいた。
 プリズムには目がないはずなのにじっとこちらを見ているように感じて、動けなかったのだ。
 ゆっくりとプリズム男が近づいてくる。足は震えて力が入らない。もうダメだ家出なんて馬鹿なことするんじゃなかった、そう思ったとき。
「こんな夜中まで遊んでいるなんて、君は悪い子だね」
 降ってきた声に顔を上げた。プリズム男と目が合った。その視線がどこか咎められているように感じて思わず少女は言っていた。
「ご、ごめんなさい……」
「反省したかい? だったらちゃんと家に帰るんだよ」
「わ、わかった。ちゃんと帰る」
 こくりと頷いた少女に満足したのか。何もすることなくそのままプリズム男はどこかへと消えていった。

「た、ただいま……」
「あんた! 今までどこ行ってたの!」
 家の扉を開けた少女に待っていた怒声。だが、叩かれると思った少女の予想に反して母親は少女を抱きしめた。
「心配していたんだよ。近所であんなことあったばかりだったから」
「あんなこと?」
 首をかしげる少女に母親は居間のテレビを示した。テレビにはニュースの生中継が映し出されており、近所の廃墟の前でレポーターが何か言っている。

『繰り返しますが一時間ほど前、こちらの廃墟で多数の少年少女たちが飛び降りる姿が目撃され……』
「えっ?!」
 いくつか出てくる少年少女の名前、それは先ほどまで一緒にいた友達たちと全く同じで。
 そこで初めて少女は思い出した。

 プリズム男に見つかってはいけない。見つかったとしても「ちゃんと帰る」と約束してそれを果たせばよい。
 そうでなければ――。
執筆:心音マリ

PAGETOPPAGEBOTTOM