PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

今日のマッチョ☆プリン

関連キャラクター:マッチョ ☆ プリン

Muscle Beach。或いは、果てしなきプリン伝説…。
●Muscle Beach
 夏の日差しよりなお暑苦しい。
 灼熱に焼けた白い砂浜に、黒光りする男たちが並び立つ。
 ビーチの片隅、波うつ青い海を背に、1段高く設けられたステージと、ステージに詰め寄る水着姿の男女たち。
「土台が違うよ! 土台が!」
「キレてるよ! 仕上がってるよ!」
「ナイスバルク!」
 唾を飛ばして観客たちが叫ぶたび、ステージの上で男たちがポーズを決める。
 ダブルバイセップス。
 ライチスプレッド。
 サイドチェスト。
 トライセップス。
 アブドミラル・アンド・サイ。
そして、モスト・マスキュラー。
 掛け声に合わせてポーズを決める黒光りする男たち。
 その中に1人、ひと際巨大な肉体と、異様な頭部を持つ者がいた。
「体が鎧みてぇだな、おい!」
「その肉体、まるで鋼鉄だよ!」
「新人類!」
「筋肉の徳が高すぎる! 前世に国でも救ったんか!」
「マッスル細胞はあるんですか!!」
「頭にプリン乗っけてんのかい!」
 オーディエンスの視線を一身に浴び、ポーズを決める鎧の体。プリンを被ったその者の名はマッチョ☆プリン。
「オレガ……マッチョ☆プリンダ!」
 マッチョ☆プリンがポーズを決めれば、背後で大きな波があがった。
 
 鉄帝のとあるビーチはこの季節、マッチョたちに埋め尽くされる。
 世に名だたるマッチョたちは、この日のために体を鍛え、この日のために来る日も来る日もトレーニングに勤しんでいるのだ。
 眠れぬ夜もあっただろう。
 涙を流した日もあっただろう。
 それもすべてはこの日のためだ。
 通称“マッスル・ビーチ”。
 年に一度の筋肉の祭典。
「……名ノ知レタマッチョガ集マッテイルナ」
 マスター・オリーブ。
 マスクドローレット。
 バルク・ホーガン。
 錚々たる名だ。
 しかし、相手にとって不足は無いと。
 肩で風を切りながら、マッチョ☆プリンが砂浜を行く。
 その巨体に気圧されたのか、人混みが割れてマッチョ☆プリンの行く道を造った。
 かつて、どこかの聖人は祈りによって海を割って道を作った。
 それは奴隷たちのための道だ。
 けれど、マッチョ☆プリンの作ったそれは、マッチョのための道である。
 人混みを抜けたその先には“マッスル・ビーチ”のステージがある。
「あんたの筋肉、魅せてくれ!」
「筋肉の重さで陸が傾いちまいそうだよ!」
「聞かせてくれ! あんたの名前、教えてくれ!」
 喝采。
 降り注ぐ大歓声の雨を浴び、マッチョ☆プリンはポーズを決めた。
 バックリラックスポーズからのバックダブルバイセップス。
 あまりの迫力を間近で浴びて、数人の観客が砂浜に倒れた。
 くるり、と背後へ視線を向けて、マッチョ☆プリンは雄たけびを上げる。
「オレハプリンダ!!」
 この日、プリンは伝説となった。
執筆:病み月

PAGETOPPAGEBOTTOM