PandoraPartyProject

幕間

今日のマッチョ☆プリン

関連キャラクター:マッチョ ☆ プリン

ある目撃者の日記より『マッチョさんについて』
 今朝、ラドバウの近くの広場で信じられない物を見た。
 テーブルに並べられた幾つもの白い小皿、それぞれに乗る何故かは知らないが一口食べられたり崩れたりして欠けたプリン。それらの前でマッチョさんが…プリンに再生を指導していた。そうとしか説明できない。
「プリザーヌ、偉大ナルプリンノ導キヲ感ジルノダ! プリリンド、イイゾ、形ガナオリツツアル!」
 マッスルポーズを取りながら汗を流し、プリンに満面の笑みを向けるマッチョさんは間違いなくなんの迷みもないだろう。そして歌うのはプリンを礼賛する歌。それでは天使の歌ではなくプリンの歌……あ、欠けた。
「ジーザース! プリザァァァンヌ! キミノプリンラシサハワスレナイ!」
 おんおん泣きながらプリンを全部食べ、不屈の誓いを立てるマッチョさんはよくわからないけど、間違いなくすごく輝いていた。
 あまりにも迫真の行動だったので記録を残すが、多分寝ぼけて夢と現実を誤認したのだ、そう思いたい。
後で追いつかれてキレられたらしいよ
 その日、いい天気の中をその少女は歩いていた。どこからともなく甘い匂いがして、そちらを見るとカップケーキの移動販売店というべきものがカップケーキを売っていた。人々が集まっていて大人気のようだ。
 いいなぁなんて思いながら道を歩く少女の横を、なんか黄色いものが通り過ぎた。
 えっ? と振り返るとこう、よくわからないマッチョが走っていた。
「ウォォォォォ! 甘イモノ! プリン!!!」
 頭がどう見てもプリン。二度見してもプリン。甘いものを感知して全力疾走するその存在の名はマッチョ ☆ プリンである。
 少女の目の前でマッチョはカップケーキの移動販売店へと突撃していく。
 人の波をかき分け、吹き飛ばし、すれ違った人の口になぜかプリンを突っ込み、ポーズを決め。時折プリン、プリンダ! と叫んでいる。よくわからなくて怖い。
 さすがに危機感を覚えたのか、お店は雑に表に出していたカップケーキをしまうとマッチョとは逆方向に逃げ出した!
「マテェェェェ! オレノプリン!!!」
 逃げるお店、追うマッチョ。叫び声が遠くなっていく。
 嵐みたい、だと少女は思った。
 そしてお店が売ってるのプリンじゃなくてカップケーキだけど、と教えてあげた方がよかったのかな、とも思ったという。

 お店 VS マッチョの追いかけっこはその日町中のあちこちで目撃されたらしいよ。
執筆:心音マリ
Muscle Beach。或いは、果てしなきプリン伝説…。
●Muscle Beach
 夏の日差しよりなお暑苦しい。
 灼熱に焼けた白い砂浜に、黒光りする男たちが並び立つ。
 ビーチの片隅、波うつ青い海を背に、1段高く設けられたステージと、ステージに詰め寄る水着姿の男女たち。
「土台が違うよ! 土台が!」
「キレてるよ! 仕上がってるよ!」
「ナイスバルク!」
 唾を飛ばして観客たちが叫ぶたび、ステージの上で男たちがポーズを決める。
 ダブルバイセップス。
 ライチスプレッド。
 サイドチェスト。
 トライセップス。
 アブドミラル・アンド・サイ。
そして、モスト・マスキュラー。
 掛け声に合わせてポーズを決める黒光りする男たち。
 その中に1人、ひと際巨大な肉体と、異様な頭部を持つ者がいた。
「体が鎧みてぇだな、おい!」
「その肉体、まるで鋼鉄だよ!」
「新人類!」
「筋肉の徳が高すぎる! 前世に国でも救ったんか!」
「マッスル細胞はあるんですか!!」
「頭にプリン乗っけてんのかい!」
 オーディエンスの視線を一身に浴び、ポーズを決める鎧の体。プリンを被ったその者の名はマッチョ☆プリン。
「オレガ……マッチョ☆プリンダ!」
 マッチョ☆プリンがポーズを決めれば、背後で大きな波があがった。
 
 鉄帝のとあるビーチはこの季節、マッチョたちに埋め尽くされる。
 世に名だたるマッチョたちは、この日のために体を鍛え、この日のために来る日も来る日もトレーニングに勤しんでいるのだ。
 眠れぬ夜もあっただろう。
 涙を流した日もあっただろう。
 それもすべてはこの日のためだ。
 通称“マッスル・ビーチ”。
 年に一度の筋肉の祭典。
「……名ノ知レタマッチョガ集マッテイルナ」
 マスター・オリーブ。
 マスクドローレット。
 バルク・ホーガン。
 錚々たる名だ。
 しかし、相手にとって不足は無いと。
 肩で風を切りながら、マッチョ☆プリンが砂浜を行く。
 その巨体に気圧されたのか、人混みが割れてマッチョ☆プリンの行く道を造った。
 かつて、どこかの聖人は祈りによって海を割って道を作った。
 それは奴隷たちのための道だ。
 けれど、マッチョ☆プリンの作ったそれは、マッチョのための道である。
 人混みを抜けたその先には“マッスル・ビーチ”のステージがある。
「あんたの筋肉、魅せてくれ!」
「筋肉の重さで陸が傾いちまいそうだよ!」
「聞かせてくれ! あんたの名前、教えてくれ!」
 喝采。
 降り注ぐ大歓声の雨を浴び、マッチョ☆プリンはポーズを決めた。
 バックリラックスポーズからのバックダブルバイセップス。
 あまりの迫力を間近で浴びて、数人の観客が砂浜に倒れた。
 くるり、と背後へ視線を向けて、マッチョ☆プリンは雄たけびを上げる。
「オレハプリンダ!!」
 この日、プリンは伝説となった。
執筆:病み月

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