PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

放浪メシ

関連キャラクター:バクルド・アルティア・ホルスウィング

あまくやさしく
 雨音に混じって、ぱちりと焚き火が音を鳴らす。
 僅かに濡れてしまった上着を乾かそうと脱いでいると、小さなくしゃみが響いた。少女には思ったよりも冷えたようだ。洞穴の入り口では、雨は防げてもぬくもりはない。
 焚き火の傍らに来るよう促し、空を見上げる。まだしばらくは、陽の光が差し込むことは無さそうだ。昼というにも、夜というにも中途半端な時間。さてどうするかと考えた時、先程木からもぎ取った赤い果物を思い出した。
 やわい鴇色の瞳が見上げてくるのに、笑って返す。

「今日は別の食い方をしてみるか」

 甘く焼けた林檎の香りが洞穴に満ちれば、少女の顔はわずかにほどけた。
執筆:倉葉

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