PandoraPartyProject

幕間

放浪メシ

関連キャラクター:バクルド・アルティア・ホルスウィング

闘いの後
 敵を屠る。それを続けて、随分と時間が経っていた。
 群れをなしていたはずの敵の、最後の一匹。それが地面に崩れていくのを見届けて、バクルドはようやく息を吐きだした。

 闘いで昂っていた身体を落ち着けると、疲労と共に空腹を実感する。
 近くに敵の気配はない。ならば、そろそろ昼食にしようか。

 地面に座り、今朝出店で買った包みを開ける。パンにはさまれた厚切りの肉にかぶりつくと、身体が求めていたような味がした。同じくパンにはさまれていたキャベツはみずみずしく、喉を通り抜けて、身体の奥底を癒していく。

 ああ、うまい。そんな言葉を、食事と共に飲み下した。
生きるための糧
 森の中といえば、迷ったら最後『生きる』という事が過酷になることもある。
 それを支えるのが食。しかしその食も森の中では極稀にギャンブルとなり得るものだから、生死をかけた娯楽でもある。

「さて、今日の収穫はと……」

 バクルドの手に握られているのは、そこら辺に生えていた木の実と、食べれそうな感じの草と、兎の肉。
 調味料は無いため、適当にぶち込んで水から煮てればなんとかなると信じて、火を炊いて煮込んで喰う。

「……うーん、不味い」

 草から出た甘みが木の実の苦味をより増長させて、兎の肉に変な味をつけている。
 これなら兎の肉を焼くだけが良かったか、と少々後悔したりした。
酒は百薬の長
 日は暮れ、青白い満月が木々の間から顔を出していた。
 この暗い森の中だ。街に戻ろうとすれば逆に道に迷ってしまうかもしれない。
「さて、と……。腹が減ったな」
 そう言葉を零したバグルドは倒木に座り、携帯食料の袋を開く。
 干したイモと干し肉。質素だが携帯食料らしくはあり、また旅の中では命を救うこともあるのだ。
 干した肉に食らいつけば、塩気の効いた味が口内に広がった。
「あー、酒が欲しいな」
 命を救うとは言ったものの。百薬の長といわれる酒にはかなわない。
 街に戻ったら、乾燥してない肉と芋。そんで酒を山ほど飲みたいもんだと、ため息をついた。
執筆:凍雨
川魚の串焼き
 川面に釣り針を投げて、長い時間が過ぎた。急拵えの釣り竿は存外手に馴染んだが、一向に獲物は掛からない。
 ざあざあと川は流れ続ける。焦らず待った、その瞬間。
 全身を引き摺りこまれる強い感覚――力いっぱいに引き上げる!
 冷たい水飛沫を上げて、大きな銀魚が弾けた。

 調理方法は、釣り竿を握りながら飽きるぐらいに想像していた。
 串を刺し、焚き火で炙ると、銀色の鱗は食欲をそそる焼き色に早変わり。塩を振りかける。がぶりとかぶりつく。表皮を噛み切ると、パリッと小気味いい音が響いた。塩の旨味が染み渡った肉厚な中身も、これまた悪くない。
 待っていた時間が報われるような満足感だった。
執筆:
あまくやさしく
 雨音に混じって、ぱちりと焚き火が音を鳴らす。
 僅かに濡れてしまった上着を乾かそうと脱いでいると、小さなくしゃみが響いた。少女には思ったよりも冷えたようだ。洞穴の入り口では、雨は防げてもぬくもりはない。
 焚き火の傍らに来るよう促し、空を見上げる。まだしばらくは、陽の光が差し込むことは無さそうだ。昼というにも、夜というにも中途半端な時間。さてどうするかと考えた時、先程木からもぎ取った赤い果物を思い出した。
 やわい鴇色の瞳が見上げてくるのに、笑って返す。

「今日は別の食い方をしてみるか」

 甘く焼けた林檎の香りが洞穴に満ちれば、少女の顔はわずかにほどけた。
執筆:倉葉
お残しは最少に。
 息を潜め、五感を巡らせ、森と一体化するかのように――引き金を絞り、引く。轟音と共に飛ぶ鳥の首が弾けるようにちぎれ体に一拍遅れて地に落ちた。
 高威力の改造ライフルは頼れる相棒ではあるが、小鳥を狩るにはコツが要る。鹿や熊などであれば丁度良かろうが、旅の道連れの少女と二人で食っても大半が食う前に傷む。余った肉は埋めて自然に返すしかない。
 自然と狩るのは鳥や兎、大型の鼠類となる。大火力でも可食部を潰さぬよう上手く仕留めるのも慣れたが。
「しかし赤身が恋しいな……」
 次に村に泊まる時には手土産も兼ねてデカいのを狩るかと内心呟いて、拾い上げた鳥を捌き始めた。
ほんのひと手間
「困ったな」
 獲物を捕らえ飯にしようかと捌いたところで思わず顔をしかめた。そんな気はしていたが肉が硬い。焼いて食べることはできるだろうが、自分はともかく義娘の彼女には少々きついだろう。
 小さく切り取ってやるか、そう考えたところで目の前を小さな虫が飛んで行った。

 この日、二人が食べたのはやはり焼いた肉だった。ただし、少しはちみつに漬けたものであるが。
 あのとき通っていったのは蜂で、追って見つけた巣から少々拝借していたのであった。
 おかげで硬かった肉は柔らかくなり、少女でも食べやすかったのは表情を見たらわかった。
執筆:心音マリ
流離の行商人
「ふむ、なるほど」
 今夜は、道すがら出会った、行商人から頂いた、馬の干し肉と、黒パンで晩メシとする。
 ナイフで黒パンを薄く切って「ふん!」力を込めて黒パンを薄くしてその上に馬の干し肉を乗せる。
 それだけでは味気が無いので、その上からさらにチーズをのせ、岩塩をまぶし、蛋黄酱をかけて……。
 馬の干し肉とチーズの黒パンサンドの完成だ。

 ぎゅうう、と少女のおなかから腹の虫の鳴る音が聞こえた。
 無理もない。このうっそうとした森では、中々、野営できる―休める―場所が見つからず、晩飯が遅くなってしまった。
 完成したサンドを少女に手渡すと、目を輝かせながらパクリとサンドに齧り付く。
歓楽街の酒場
「ふう、辿り着いたな」
 どうやら、今日は祭りの様で。街の宿は何処も埋まっているらしい。
 ……ううむ、困った。少女を見ると今にも倒れそうだ。休める場所。
 門番に何処かいい所はないかと尋ね「幻狼の酔風亭」に行ってみる。

 まずは腹ごしらえの前に、疲れた体を休ませようと、思っていたが、
 少女の疲れも限界だ。などと考えていると、いい匂いが漂ってきた。

 宿の場所を門番に尋ねたが、着いた先は酒場だった。 
 酒場の中に入る。給仕に案内された席に座り、少女を休ませる。
 とりあえず、エールと。ソーダで果実の汁を割った物を一つずつ頼み。
 今日の疲れを癒すため、少女と唱杯をし、一気に飲み干した。うまい。
酔風亭の賄い飯
「なにか食べる物でも頼むか」
 少女も同じ思いだろう。店内を見回している。
 無理もない。俺も腹ペコだ。

 流離の行商人から頂いた肉を挟んだサンドを、
山中で食べたっきり何も腹の中に入れていない。
 そう思い、店員らしき女に声を掛けてみる。

「あー、すまないが何か食べる物を頼みたいのだが」
「お、すまないねぇ、この騒ぎだろ? 食えるもんは全部売り切れでね」
「賄いで良けりゃぁ出せるがどうするね?」 
 むうぅ、悩んだ末、それを二人分頼んだ。

 出てきたのは鳥の煮込みと、固い黒パンに野菜がほんの少し。
 柔らかく煮こまれた鳥の肉と、じゃがいもやニンジンが丁度いい。
 少女も満足そうだ。
幻狼風の甘味
 酒場の賄い飯を頂いて、少しばかり腹は膨れた
 せっかくこの地に訪れたのだ、何か名物を食してみたい。
 が、少女の意向を無視するわけにも行かない。

「あー、何か他に食べたいものがあるか」と少女に尋ねると。
 少女は目を輝かせて「コレが食べたい」と看板を指さした。
 其処には『幻狼風プディング』と書かれていた。
(甘味か)

 少女がそれを食したいと願うなら叶えてやるのが親の務め。
「あーすまないが」と女店員を呼び止めて食後の甘味を頼んだ。

「へぇ、珍しいね、荒くればかりが来るもんでソレはあまり頼まれないんだ」

 すぐに二人分のプディングが来て少女と仲良く食した。
 甘い。

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