PandoraPartyProject

幕間

ストーリーの一部のみを抽出して表示しています。

ドラネコさんのおはなし

関連キャラクター:ユーフォニー

助けての声が聞こえる。或いは、ウミネコエスケープ…。
●海に鳴く
 みゃーみゃー。
 みゃーみゃー。
 どこからか聞こえる鳴き声に、ユーフォニーは「おや?」と首を傾げて辺りを見回した。
 海洋。
 とある港町。
 空は快晴。
 どこまでも抜けるような青が広がる。
 潮風に踊る髪を押さえて、視線を彷徨わせるユーフォニーを見て猟師らしき若い男がくっくと肩を揺らして笑う。
「気になるかい? みゃーみゃー鳴くのはウミネコさ」
「まぁ! ウミネコ! きっと可愛らしいんでしょうね!」
 “ネコ”と聞いて、ユーフォニーは喜色ばむ。
 8匹ものドラネコと共に過ごすほど、彼女は生粋の猫好きなのだ。
 もっとも、都合8匹のドラネコたちとはすっかりはぐれてしまっているが……。
「あの、この辺りで猫を見ませんでしたか? 羽の生えた猫ちゃんたちです」
「羽の生えた猫? いやぁ、悪いな、そう言ったのは見ていない」
「そうですか。でしたら、この辺りで猫がよく集まっている場所などは無いでしょうか?」
「あぁ、それなら……」
 あっちの海岸沿いに、猫の集まる区画があるよ。
 そう言って、猟師の男は立ち去って行った。

 ドラネコたちが急に、そして一斉に飛び立っていったのは今から十数分ほど前のことである。
 喫茶店のテラス席。
 午後の紅茶を楽しんでいたユーフォニーの足元には、一緒に港へ遊びに来ていた8匹のドラネコたちが寝ころんでいた。
 天気もいいし、次は浜にでも行ってみましょう。
 そんなことを考えていたが、数瞬後にその予定は崩れることになる。
 ドラネコたちの耳は、人には聴こえぬ何かを聞きつけたのだろう。ユーフォニーの制止も聞かず、一斉にどこかへ飛び立った。
 あっけに取られ、思わず固まるユーフォニーが行動に移ったのはそれから少ししてのこと。慌てて会計を終え、ドラネコたちが飛び去った方向へ疾走して……紆余曲折の末、今は海岸沿いにいた。
 8匹のドラネコたちが、ひと塊になって岩と岩の間に潜んでいるのを見つける。
 近づいてみれば、ドラネコたちはどうやら何かを守っているようだ。
「にゃぁお」
 そのうち1匹、ミーフィアがユーフォニーを呼ぶ。
「……その子は? 猫、ちゃん……? いえ、それよりも」
 怪我をしているみたいですね。
 ユーフォニーは、8匹が守っていた小さな猫へ手を伸ばす。猫にしては妙にしっとりしているし、尻尾なんてまるで魚のようではないか。みれば耳の先は魚のヒレのようであるし、首元にはエラのようなものもある。
「皆は、この子が助けを呼ぶ声を聞いて飛んで来たんですね」
 そう言ってユーフォニーは、奇妙な仔猫を抱き上げた。
 魚の特徴を備えた仔猫……これがきっと“ウミネコ”だろう。
 
 なお“ウミネコ”とはカモメ科カモメ属に分類される鳥類である。
執筆:病み月

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